榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

大変だが魅力的な野鳥のフィールドワークの調査・研究報告集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1341)】

【amazon 『はじめてのフィールドワーク(3)――日本の鳥類編』 カスタマーレビュー 2018年12月22日】 情熱的読書人間のないしょ話(1341)

散策中、オナガの独特の鳴き声が聞こえたので、そちらに近づくと、飛び立ってしまいました。飛び去った方向を次から次へと、時間を気にせず追跡して、遂に20羽ほどの群れに追いつきました。これぞ、個人での野鳥観察の醍醐味です。フィールドワークのほんの真似事ですが(笑)。因みに、本日の歩数は10,897でした。

閑話休題、『はじめてのフィールドワーク(3)――日本の鳥類編』(武田浩平・風間健太郎・森口紗千子・高橋雅雄・加藤貴大・長谷川克・安藤温子・山本誉士・小林篤・岡久雄二・武田広子・黒田聖子・松井晋・堀江明香著、東海大学出版部)には、野鳥のフィールドワークに明け暮れた若手研究者の14篇の調査・研究報告書が収録されています。

とりわけ興味深いのは、岡久雄二の「鳥博士のキビタキ暮らし」、武田広子の「コウノトリのハチゴロウが運んでくれた『つながり』、堀江明香の「白いアイリングの中を覗け――亜熱帯の森にメジロを追った10年間」――です。

「私が10年近くを費やすことになったのが富士山でのキビタキ研究である。・・・キビタキを調査する中で、何よりも気になったのが羽色の個体差であった。・・・若いオスが高齢オスと異なる色をもつことの機能として『地位伝達信号仮説』がある。この仮説は、若いオスが自分は若く、闘争に弱いということを他のオスに羽の色によって伝え、オス間の闘争コストを下げるという仮説である。つまりは『自分は弱いから、攻撃しないでください』とアピールしているという仮説である。・・・(5年に亘る調査)結果を総合すると、キビタキの羽の色の個体差は、渡りと換羽、繁殖というエネルギーを消費する3大イベントのすべてと繋がっており、個体ごとに必死にそれらを乗り切るために生じた形質なのだといえるだろう」。昨日、我が家の庭に、稀少性ではキビタキに一歩譲るが、美しさでは肩を並べるジョウビタキがやって来ました。

「2012年4月より、千葉県野田市でコウノトリ野生復帰に向けて開始される飼育事業に合わせて飼育作業を担当する、株式会社野田自然共生ファームでコウノトリ飼育員として働き始めた。野生復帰を進めている(兵庫県の)豊岡で野外コウノトリの調査を行ってきた経験を活かして、コウノトリ野生復帰の現場に少しでも貢献できたらという思いから飼育員に就いた」。我が家から程近い野田市の「こうのとりの里」では、武田らの努力が実り、2015年から2018年まで4年続けて飼育・放鳥に成功しています。

「メジロは、体長11センチメートル、体重も11グラムほどの小鳥で、北海道から沖縄まで日本全国に分布する。オリーブ色の背中と黄色いのどが美しい鳥だが、最大の特徴はその白いアイリング(目の周りの輪)だ。国内に6亜種が生息しており、私の卒業研究の対象種となったのは、南西諸島に分布する亜種リユウキュウメジロである」。その後、大東諸島のみに生息する固有亜種のダイトウメジロも堀江の研究対象種となっています。なお、我が家にやって来るのは亜種メジロです。

フィールドワークの大変さと魅力が行間から滲んでくる一冊です。