榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

「世の中、すべては実験」と嘯(うそぶ)く面白い男が考えている過激なこと・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1539)】

【amazon 『実験思考』 カスタマーレビュー 2019年7月6日】 情熱的読書人間のないしょ話(1539)

東京・上野の不忍池では、ハスが咲き始めています。上野で開かれたイーピーメディカル~ファーマネットワーク時代の仲間の卒業祝い会に招かれ、心温まる時間を過ごすことができました。因みに、本日の歩数は11,506でした。

閑話休題、『実験思考――世の中、すべては実験』(光本勇介著、幻冬舎)では、著者のハチャメチャな実験の顛末が記されています。

「ぼくにとって、すべてのビジネスは『実験』です。自分の考えたアイデアや仮説を『世の中』というビーカーにぶち込んでみる。そこでどんな『火花』が散るのか、『化学反応』が起きるのかを見たいのです。そこでいままで誰も見たことのないものが生まれたり、誰もやっていないようなことが実現できたりしたら、シンプルにおもしろい」。

「ぼくは2017年に『CASH』というアプリを作りました。簡単にいえば『目の前のアイテムが一瞬でキャッシュ(現金)に変わる』サービスです。服でも、靴でも、バッグでも、そのアプリで写真を撮れば、その瞬間に金額が表示され、その額が口座に振り込まれます。仕組みは『買取サービス』と同じなのですが、モノの写真を撮った瞬間に現金が振り込まれるのは、インパクトが大きかったのでしょう。リリースされると、SNSを中心に爆発的に話題になりました。みんなが目の前のアイテムをキャッシュに変え始め、数時間でぼくらの会社からは3.6億円が飛んでいきました。あまりの人気でその日の深夜にサービスを休止せざるをえないほどでした」。

「『写真が送られてきただけでお金を振り込むなんて怖くないですか?』とよく聞かれます。でも、ぼくは『成功したいから』やっているわけではありません。あくまで『実験』なのでぜんぜん怖くはないのです」。

「ぼくのなかで快感と怖さは半々でした。世界でまだ誰も見たことのない実験の結果がわかるぞというゾクゾク感があった。CASHは、人を信頼して先にお金を渡して、後で取引をその人がちゃんとしてくれればビジネスになります。・・・こんなにサービスが話題になって、大量にモノが送られてくることは想定外でした。・・・『すぐに現金が手に入る』ということがこれほど求められているのか・・・。『持ち逃げ』するような悪い人はほんの一部で、ほとんどの人は信頼できるんだな・・・。サービスを通じて『人間の本質』が見えたのです。もちろんぼくは『起業家』なので、『ビジネスを成功させたい』という思いも当然あります。ただそれ以上に『実験家』としてアイデアや仮説を世に問うことで、人間を知ることができる。こんなにおもしろいことはない、と思うのです」。

著者が、この業界なら、こういう問題を解決して、「お金を稼ぐ仕組み」を作ったら受けるのではないか、と考えているアイデアの一部を挙げてみましょう。

●ものすごくカジュアルに月1回、がんの検査ができるサービスができないかなと考えています。・・・『人間ドックは月に1回、検査キットに唾液を垂らすだけ』という時代が来るかもしれません。結果はアプリに表示されて、つねにスマホで、無料で健康管理をすることも不可能ではありません。

●セコムのような監視カメラは無理かもしれませんが、ドアや窓が勝手に開いたらアプリで教えてくれるサービスなら安く作れるかもしれない。もしくは温度を感知して教えてくれるアプリでもいいでしょう。本当に誰でも最低限のセキュリティサービスを受けられる、そういうものを無料でばら撒く、というのはできそうです。玄関や天井に簡単なカメラキットをつけてもらえば、セキュリティをすべての人に提供できるかもしれません。

●いまの世の中、一人ひとりさまざまな趣味嗜好や価値観を持っています。そんななかで、その人に合ったモノを買えることが普通になるべきです。その人の欲しいモノをそのまま用意して提供してあげる。そんなオンラインのオーダーメイド市場にも興味があります。

●飲食・小売業界は、金融事業に変換することでさらにお金を生み出す可能性があります。

――などなど、著者のアイデアは尽きることがありません。何とも刺激的な一冊です。