榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

「家事手伝い」のアルバイト青年が老夫婦の家に通ってくるようになったら、異変が・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1622)】

【amazon 『その話は今日はやめておきましょう』 2019年9月26日】 情熱的読書人間のないしょ話(1622)

遅れ馳せながら、今朝、我が家の庭の片隅で、白いシロバナマンジュシャゲが咲きました。赤いヒガンバナも負けじと頑張っています。タイワンホトトギスも咲き始めました。因みに、本日の歩数は10,674でした。

閑話休題、『その話は今日はやめておきましょう』(井上荒野著、毎日新聞出版)は、リトマス試験紙のような作品です。

大楠昌平・72歳とゆり子・69歳は、趣味のクロスバイクを夫婦で楽しみながら、定年後の穏やかな日々を送っていました。ある日、昌平が交通事故で骨折し、ゆり子が「家事手伝い」のアルバイトを、自転車のパンク修理で知り合った青年・石川一樹・26歳に依頼します。一樹が週1回、通ってくるようになり、ゆり子は家の中の異変が気にかかり始めます。

夫婦とも息子のように頼もしく思っていた青年が・・・。

この小説を読んで、怒りを覚えた人間は、間違いなく「老いゆく者」と言えるでしょう。この判定を下すためのリトマス試験紙なのです。

日常生活の中で、呑気にも、自分が「老いゆく者」という自覚がない人は、迷わずに本書を手にすべきです。