榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

『日暮硯』から学ぶこと・・・【山椒読書論(354)】

【amazon 『日暮硯』 カスタマーレビュー 2013年12月23日】 山椒読書論(354)

組織の立て直しに挑戦した日本人という観点から、私は恩田木工(もく)、上杉鷹山、二宮尊徳の3人に関心を寄せている。

火の車となった江戸時代中期の松代藩(現在の長野市松代町)の財政改革、精神改革を見事に成功させたとされる家老・恩田木工民親の事績を描いた『日暮硯(ひぐらしすずり』(笠谷和比古校注、岩波文庫)は、経営幹部を初め多くの人々の支持を受けている。

しかし、実は木工の財政改革はほとんど成功せず、木工が人々から慕われたという話も相当割り引いて聞くべきだと考える研究者が増えつつある。

果たして成功例なのか失敗例なのかは、私にとって興味のあるテーマであるが、たとえ失敗例であったとしても、木工の誠実な努力は疑うべきでなく、失敗例から教えられることは多い。

今、自分は何をやらねばならないのか、自分に何ができるかを考えようとせず、どうすれば何もしないで済むかということばかり考えている人間が多い組織は、間違いなく滅び去ることだろう。目標を考えるとき、「そんなことはできるはずがない」と考えてしまうと、その時点で一切の可能性が閉ざされてしまう。人間は「No」と思った瞬間に、精神と肉体の全てが後退の姿勢を取ってしまう。行動する前から諦めていないだろうか。自分が変われば組織が変わることを信じて、新しい一歩を踏み出そう。