勝海舟の人物評は、すこぶる面白い・・・【山椒読書論(374)】
【amazon 『氷川清話』 カスタマーレビュー 2013年12月30日】
山椒読書論(374)
勝海舟の言葉を集めて編まれた『氷川清話』(勝海舟著、江藤淳・松浦玲編、講談社学術文庫)は、人物評の部分がとりわけ面白い。
海舟は横井小楠、西郷隆盛、坂本龍馬をどう見ていたのか。
「おれは、今までに天下で恐ろしいものを二人みた。それは横井小楠と西郷南洲(隆盛)だ。横井は、西洋のことも別にたくさんは知らず、おれが教えてやったくらいだが、その思想の高調子なことは、おれなどは、とてもはしごを掛けても、およばぬと思ったことがしばしばあったよ。・・・その後、西郷と面会したら、その意見や議論は、むしろおれの方がまさるほどだったけれども、いわゆる天下の大事を負担するものは、はたして西郷ではあるまいかと、またひそかに恐れたよ。・・・横井の思想を、西郷の手で行なわれたら、もはやそれまでだと心配していたのに、はたして西郷は出て来たわい」。
「坂本(龍馬)が薩摩から帰ってきていうには、『なるほど西郷というやつは、わからぬやつだ。少しくたたけば少しく響き、大きくたたけば大きく響く。もしばかなら大きなばかで、利口なら大きな利口だろう』といったが、坂本もなかなか鑑識のあるやつだよ」。
因みに、龍馬の思想は、海舟と小楠の影響を強く受けている。龍馬は、自分と考え方が異なる海舟を暗殺しようと海舟宅に押しかけたが、逆に説得され、その場で海舟に弟子入りしてしまったのだと、海舟が語っている。
一方、龍馬は、故郷・土佐の敬愛する姉・乙女に、「今にてハ(は)日本第一の人物勝憐(麟)太郎(海舟)殿という人にでし(弟子)になり」と、誇らしげに書き送っている。