榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

発展する組織と、衰亡する組織の命運を分けるものは何か・・・【山椒読書論(441)】

amazon 『組織の盛衰』 カスタマーレビュー 2011年12月30日】 山椒読書論(441)

組織の盛衰――何が企業の命運を決めるのか』(堺屋太一著、PHP文庫。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)は、かなり以前に刊行されたものだが、組織の一員である私たちが学ぶべき多くの示唆に富んでいる。

時代が継続し、環境が不変なら、組織の問題は実務の範囲で処理できる。しかし、世界構造が変わり、歴史の発展段階が転換しようとする時代には、これまでの経験と経緯を離れた観察と思考が必要だというのが、著者の基本認識である。

成功体験に埋没した戦後日本的組織は、このままでは衰亡するという危機感を出発点として、何が組織(企業)の命運を決めるのかが明らかにされていく。

本書の魅力の一端は、下記に挙げるこの著者特有の警句的表現から窺い知ることができる。これらを私の自戒の言葉にしたいと思う。

●創造力というものは、必ず少数者から出されて、従来の多数派に変革を求める性格がある。従って、共同体化した組織では、創造力は和を乱すものとして排除、排撃されることになる。

●今、何を行うべきか、何をなさざるべきかという意思決定が速やかに行われ、明確に確定されることは、組織の目的達成の前提条件といってよい。

●出世だけを目的とした小ずるい利口者は、大抵まず一度は批判派に回る。それも明確な反対ではなく、問題点を並べて慎重な検討を求める曖昧な批判だ。これだとその事業が成功した時にも、功を分かち合うことができる。

●組織は成功体験には溺れ易いが、失敗には学び難いのである。

●「戦闘は敵も味方も互いに錯誤の連続だ。より少なく間違えた方が勝つ」といわれるが、事業とて同じである。一方に思わぬ不運があれば、他方には予想しなかった幸運もある。

●広い意味でのテクノロジー(技術)は3つの極から形成されている。第1が
ハードウェア、第2がソフトウェア、第3がヒューマンウェア、つまり対人技術(人と人との関係技術)である。

堺屋太一が渾身の力を込めた著作だけに、時を経ても古びることなく、輝きを放っている。