愛ゆえに落ちぶれていく男の悲哀が、私の胸を締めつける・・・【山椒読書論(454)】
【amazon DVD『黄昏』 カスタマーレビュー 2014年6月12日】
山椒読書諭(454)
見てから何十年にもなるのに、私の胸に強烈に焼き付いている映画がある。1952年に公開されたアメリカ映画『黄昏(たそがれ)』(DVD『黄昏』<ウィリアム・ワイラー監督、ローレンス・オリヴィエ、ジェニファー・ジョーンズ出演、ファーストトレーディング>)である。
シカゴにやって来た田舎娘、キャリー・ミーバーはたちまち路頭に迷ってしまう。強欲な資産家の妻との夫婦関係が冷え切っていた、一流レストラン「フィッツジェラルド」の支配人、ジョージ・ハーストウッドは、素朴なキャリーに惹かれていき、二人は恋に落ちる。
離婚の申し出を拒絶されて逆上したジョージは、店の主人の金を盗んで、キャリーとニューヨークへ駆け落ちする。楽しい新生活も束の間、盗んだ金を返さざるを得なくなり、ジョージは一文無しになってしまう。その上、金の持ち逃げを知られたことで、ジョージはまともな仕事に就けなくなり、二人の生活は困窮を極める。そんな中、生計を立てようと、キャリーは舞台女優になり、ジョージを家族のもとに返してやろうと、別れを告げる。
数年後、女優として大成功を収めたキャリーが、公演後、楽屋口から出てくると、一人の浮浪者が彼女に物乞いをする。何と、その浮浪者が別れたジョージと分かった時のキャリーの驚き。
何度見ても、愛ゆえに落ちぶれていく男の悲哀が、私の胸を締めつけるのだ。