あなたが組織のトップを目指すとき、真に役立つ本・・・【続・リーダーのための読書論(52)】
トップを目指す
組織のトップを目指すとき、どういう本を読むべきかという質問を受けた際は、『現代の帝王学』(伊藤肇著、プレジデント社)を薦めることにしている。本書が出版されたのは1979年だが、トップを目指す上でのアドヴァイスはいささかも古びておらず、しかも当時の財界人のエピソードが満載なので、ケース・メソッドとして活用できるからである。いずれ上層部を目指したいと考えている若い人も、読んで損のない本である。
人生の師を持つ
著者は、「帝王学」には3つの柱があると言っている。第1の柱は、「原理原則を教えてもらう師をもつこと」、第2の柱は、「直言してくれる側近をもつこと」、第3の柱は、「よき幕賓をもつこと」だと強調している。「幕賓」とは、直言してくれる客分、顧問、社外重役、パーソナル・アドヴァイザーといった人たちを意味している。
「昔は通用したが、今は通用しない、というのでは原理原則の価値はない。いついかなる時代にも、また、いかなる場所においても通用するのが原理原則の原理原則たる所以である」。「原理原則とは『偉大なる常識』である」。人生の原理原則を教えてくれる先生を見つけ、その先生からみっちり学べ、そして、先生から教わった当たり前のことを当たり前に実行せよ――と言うのである。
「師の一言が身にしみてわかるのは、自分自身がギリギリの場に立たされ、必死の思いで人生を求める時である」。人生の修羅場に直面したとき、先生の日頃の教えが生きてくるのだ。例えば、「窮すれば即ち変じ、変ずれば即ち通ず」という易経の言葉を先生から学んでいた場合と、そうでない場合とでは心の持ち方に大きな差が出てくることだろう。
生身の先生が見つからない場合はどうするか。読書によって優れた人物の原理原則を学ぶという方法もある。
直言してくれる人を持つ
組織でポジションが上がるにつれて、苦言が耳に入らなくなる。部下が上司の機嫌を損ねることを恐れて、直言しなくなるからである。
直言に関して、興味深い話が書かれている。「取引先からの無礼な手紙に社長が激怒した。『もう、これっきりだ、勝手にしろ』と喚き、『返事を書け!』と横にいる秘書に命じた時、秘書のとる一番いい態度と悪い態度とは、次のうちのどれか。1.命令を握りつぶす。2.命令通りに手紙を出す。3.社長に忠告する。4.社長が冷静になるまで待つ」。著者は、4を最善とし、3を最悪としている。これほど直言は難しいということだ。
社長でない我々の場合、直言してくれる人は上司、同僚、部下や先輩、後輩の中から選ぶということになろうが、社外の友人や家族の中にもそういう人を持ちたいものだ。
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