「読者が犯人」という究極のトリックに挑戦した本格推理小説・・・【情熱的読書人間のないしょ話(88)】
【amazon 『最後のトリック』 カスタマーレビュー 2015年6月10日】
情熱的読書人間のないしょ話(88)
網戸を通り抜けて、庭から甘~い香りが漂ってきます。クチナシの白い花は見た目は清楚なのに、その濃厚な香りには妖しい気分にさせられてしまいます。あたかも自分が27歳であるかのように若やいでしまうので、本当に困ります(笑)。
閑話休題、本格推理小説の最後の最後のトリックともいうべき「読者が殺人犯」という難問に挑戦した『最後のトリック』(深水黎一郎著、河出文庫)を読んでみました。
作家なのにスランプで原稿が書けない私のもとに、突然、香坂誠一という人物から、「読者が犯人」というトリックのアイディアを2億円で買い取ってほしいという手紙が送られてきます。不審感を拭えない私に、間隔を空けて第2、第3、第4、第5の手紙が届くたびに、さらに謎が深まっていきます。そして、遂に第6の手紙が・・・。
日本人作家の手によって「読者が犯人」というミステリが書かれたこと、しかも最後の結末が十分納得のいく作品であることを、一人のミステリ・ファンとして嬉しく思います。それにしても、知らぬ間に私も殺人という恐ろしい犯罪の片棒を担いでいたとは!