榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

出向を命じられた52歳の大手銀行支店長が傷心の旅先で出会った中年女性の謎・・・【情熱的読書人間のないしょ話(337)】

【amazon 『黄昏流星群(1)』 カスタマーレビュー 2016年3月30日】 情熱的読書人間のないしょ話(337)

散策中に、真っ赤な敷物かと見紛うツバキの落花たちを見つけました。ハナモモが濃い桃色の花を咲かせています。白花のハナモモもありました。ヒュウガミズキは薄黄色の花を付けています。レンギョウの花は鮮やかな黄色です。薄紫色のシデコブシ、紫色のモクレンも頑張っています。因みに、本日の歩数は22,547でした。

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閑話休題、この10日間は弘兼憲史ワールドに首まで浸かる毎日でしたが、漸く日常世界に戻ってきました。20年間、購入し続けてきたコミックス『黄昏流星群』シリーズの第51巻から遡って第1巻までを一気に再読したからです。

黄昏流星群(1)――不惑の星』(弘兼憲史著、小学館)は、「40歳を越え多くの大人達は、死ぬまでにもう一度、燃えるような恋をしてみたいと考える。それはあたかも黄昏の空に飛びこんでくる流星のように、最後の輝きとなるかもしれない。この熱い気持ちを胸に秘めつつ、落ち着かない日々を送る大人達を、我々は・・・黄昏流星群と呼ぶ――」と始まります。

主人公は52歳の芙蓉銀行富士見台支店長・盛本芳春です。入社以来30年間、銀行員として脇目も振らず仕事一筋に生きてきた彼は、現在の地位を勝ち取り、更に上のポストを狙っていました。

しかし、上司から子会社への出向を命じられ、傷心を抱え、スイス・アルプスを見る旅に出かけます。マッターホルンを間近に見るためのロープウェイで品のいい中年の日本人女性と乗り合わせます。

半年後、盛本は思いがけない所でその女性と遭遇するのです。「52歳の冬・・・。私はもうひとつの道を歩き始めた」。

「残りの人生が少なくなったと自覚した時から、ウソついて生きるのが嫌になってくるんだ」、「そうよね」。

「俺達って、すでに人生の仕上げにはいる年齢なんだ・・・。活動できる時間はもうそんなに残っていないんだ・・・」。

「俺の人生って、何だったんだろう・・・。会社に行って、働いて、給料をもらって、家族を養って、ローンを払って・・・。30年間、その繰り返しだった」。「芙蓉銀行取締役、盛本芳春――。俺はそんな肩書きが欲しいために生きてきたのだろうか? 本当の気持ちはどうなんだ、もっと違う生き方を見つけて、人生のゴールに向かって歩きたいんじゃないのか・・・。好きな女と暮らして、どちらか一方がどちらかの死を看取ることができるなら、そんな幸せはないだろう。最後の幸せにかけてみるか・・・」。我々男にとっては、「好きな女と」がキー・ポイントと言えるでしょう。女にとっては、「好きな男と」、同性愛者にとっては、「好きな同性と」ということになるのでしょうが。

『黄昏流星群』は、国内外の短篇小説の名作に引けを取らない、人生のゴールが見えてきた世代のための傑作揃いであることを再認識しました。