30代の歌人の瑞々しい感性が溢れる歌の数々・・・【情熱的読書人間のないしょ話(346)】
散策中に、ちっちゃな女の子が一所懸命、お母さんの手伝いをしている光景を見かけました。白と桃色の花が交じって咲いているハナモモを見つけました。その土地の主によれば、祖父が接ぎ木して作り上げたものだそうです。セイヨウシャクナゲが真っ赤な花をたくさん付けています。ミツバツツジの明るい桃色の花が目に鮮やかです。ドウダンツツジは白い釣り鐘状の小さな花を咲かせています。ソメイヨシノも頑張っています。因みに、本日の歩数は10,770でした。
閑話休題、『窓よりゆめを、ひかりの庭を――栗原寛歌集』(栗原寛著、短歌研究社。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)は、30代の歌人の瑞々しい感性が溢れる歌集です。
大仰な言語、表現に頼らずとも、その息吹を読み手に伝えることができるとは、嬉しい驚きです。
●この昼をいかに過ごしゐむ よこがほがきみに似てゐる人を見かけて
●それぞれの繭にこもりて一列に携帯化粧読書睡眠
●帆のごとく風に吹かれてふくらめる真白なるシャツのきみを見送る
●この朝に似合ふ言葉が見つからず歯を立ててあをき林檎をかじる
●天守閣を登りてゆけばそのかみの男らの夢たちあがりくる
●くちびるをやはくひらけるきみとゐる夕顔の莟ほどける間
●千年のとき経てもなほ美しくあらねばならず悲劇の皇子(みこ)は
●死んでもいいとI Lpve Youを訳したるやうに今きみ、愛をささやけ
●胸のうちにてしきり吼えゐるわが獣 飛ぶべき刻を夜半につげくる
●回送の列車が過ぎるホーム暗く小田急線が蛇に見える日
●にくしみをひらひらさせて歩くなりこころに翼もてぬ一日は
●うつくしき物語せよ 眠られずゐる耳もとへくちびるをよせ
●みづのごとやはらかき鬱 手のうちにこぽこぽと湧きいでたれば
●ドアをあけてしまへばひとりとひとりゆゑ耳の冷えゆく朝の歩道に
●珈琲の最後の一口を残しつつ読みつぐ本のページをめくる
心がささくれたとき、本書を手にすれば、一服の清涼剤となるでしょう。