40年間、右翼運動を牽引してきた鈴木邦男の「愛国心」と「憲法改正」・・・【情熱的読書人間のないしょ話(451)】
散策中に、鮮やかな桃色で彩られたサルスベリに目を引かれました。ギボウシが薄紫色の花を咲かせています。ホオズキが橙色の実を付けています。因みに、本日の歩数は13,135でした。
閑話休題、『<愛国心>に気をつけろ!』(鈴木邦男著、岩波ブックレット)は、40年間、右翼運動を牽引してきた鈴木邦男の手になる「愛国心」と「憲法改正」についての興味深い本です。
愛国心について、著者はこのように危機感を表明しています。「<愛国心>は人間として自然で、当然の感情であるはずなのに、為政者などに利用され、エスカレートする危険性がある。外国への憎しみを煽って、外国人を排除し、戦争を讃美する道具にもなってしまう。国をとりまく環境が不安定になると、『愛国心があるなら、国を守るために戦争も辞さずの覚悟をもて!』などとも言われる」。「安倍晋三首相も『日本を取り戻す』と宣言している。隣国と協調するよりも、日本の権益を堂々と主張しようという。そして、戦後、アメリカに押しつけられた憲法を改正し、自主憲法をもつことを目指すと公言している」。「この大きな波を警戒している。危険だと思って、反対している。現在の<愛国心>のありように疑問をもち、安保法制にも反対し、さらには『いまは憲法改正は危険だ』などと僕は発言している」。
憲法改正については、このように述べています。「僕は改憲派だが、いまの右傾化の動きに任せて、改憲することは危険だと思っている。安倍政権は『日本を取り戻す』と勇ましく宣言する。中国や韓国にじゃまされることなく、日本の立場を堂々と主張すべきだ。日本がこんなに弱体化してしまったのは憲法のせいだ。アメリカから押しつけられた憲法のせいで、戦力をもつことを否定され、日本は他国になめられてきたのだ。憲法を改正して、自衛隊を国軍にし、強力な戦力をもとう。『普通の国』にしよう――。こうした声が、一部の右派などだけではなく、世論や政治家の間でも大きくなっている」。「いまは左翼もほとんどおらず、国会では野党の力も弱い。『日本を取り戻せ』『中国、韓国になめられるな』と<愛国心>が煽られ、日本社会全体が集団で暴走しかけているようにさえ思う」。
著者は、自分は改憲派だが、現在の急激な改憲の動きは危険だから反対だと言明しているのです。
「憲法とは、本来、その時々の為政者が暴走しないように、彼らを縛るためにつくられた装置だ。それが立憲主義という考え方だ。なのに、一般の人たちも、国家の目線で自分たちを縛る方向へと、改憲を構想したがる。まず国家を守ることを考え、国民の生活、権利、自由などは、ずっと後になる」。この共通認識なくして憲法改正を語ってはいけませんね。
右翼の中にもこういう考え方の人がいるということを知るのに最適な一冊です。