榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

三流私大卒OLによる外資系企業の赤裸々なインサイド・リポート・・・【MRのための読書論(128)】

【ミクスOnline 2016年8月17日号】 MRのための読書論(128)

赤裸々な本音集

外資系企業の経営者や幹部によるビジネス書は世に溢れているが、OLが本音をぶちまけた本というのは珍しい。『外資系OLは見た! 世界一タフな職場を生き抜く人たちの仕事の習慣』(ずんずん著、KADOKAWA)の著者が経験した外資系投資銀行の世界が生々しく紹介されているが、他の業種の外資系企業で働いている人にも、外資系企業への転職を目論んでいる人にも、大いに役立つことだろう。

著者は「三流私立大学を軽やかに卒業し、新卒で就職した埼玉のブラック企業ではピンク色の制服を着て、コピーをとる・・・そんな人生でした。ところがその後、何があったかわかりませんがミラクルが起き、外資系投資銀行に転職してしまい、それがきっかけで私の人生はアウトバーンに乗ることになってしまったのです」。

「ずんずん流・あなたが30歳までに学ぶべき7つの教訓」――①金がだいたいの問題を解決してくれることを知る、②自己愛と自意識をコントロールする方法を知る、③誰もあなたのことなど気にかけていないことを知る、④自分の感情を分析する訓練をする、⑤身体はやばいぐらい鍛えろ、⑥孤独と友達になる、⑦自分の限界は年齢で決まるわけではないことを知る――のいずれも、説得力がある。

出世

「ただ(直属の上司に)媚びるだけではだめなのです。媚びて気に入られるというのは、前提にすぎません。真のできる部下というのは、すべての行動が、上司の利益につながるように動かなれればいけないのです。・・・期待に応えるだけではいけません。相手の予想を上回らなければいけないのです」。具体的には、「通常業務」と「上司関連業務」に分けて、後者に時間配分を多く割き、正確かつ期待を上回るようにこなせとアドヴァイスしている。私の長い企業経験に照らして、これは外資系に限ることではなく、日本の企業でも全く同じである。

働き方

「外資系勤務の人はいつ解雇されるかわからないため、転職を前提として日々働いています。つねに自分の転職市場での市場価値を高め、給料を上げるチャンスを狙っているのです」。

「(部門の長期計画と短期計画を)達成したとき、部門のマネジャーも評価されます。そのため、マネジャーは部門の目標を設定するために、メンバーに目標設定を振り分けていくことになります。そして、個々人の目標を具体化させ、数値化させ、期限を決め、部下がそれらの目標を達成したとき、初めて部下が『成長した』と言えるのです。つまりは、部下が成長するとは部門の業績が達成されたことであり、部下が成長しなければ部門の業績も達成されません。この両者は密接にかかわっており、部下が逃げてくモラハラ上司は、部下を育てられず部門の業績も達成できないダメ上司であり、そのうちクビを切られてしまうのです。そのため、外資系のデキる上司は、積極的に部下の業務と実績を把握しようとします」。「(何か問題が生じたときは)部下を助け、時として自分がプレーヤーになってでも命懸けで問題解決をしようとします」。この「成長とは数値化した目標を達成すること」という基本精神は、部下育成に直結するので、日本企業ももっと徹底すべきだ。

解雇

リストラの際は、どういう人から対象にされていくのだろうか。「答えは①経費の掛かる人、②仕事ができない人、③上司に気に入られていない人の順番だったのです」。

著者は、陰の支配者・人事部に注意せよと警告している。「会社への忠誠心を評価する方法のひとつに、会社が行うイベントが使われます。会社が行うイベントとは、ボランティアだったり、偉い人のスピーチだったり、パーティーだったりといろいろな形を取っています。これらのイベントへの出席率で『会社への忠誠心』を測るのです。この会社への忠誠心の評価は誰が行うのでしょうか。それは『人事部』です」。