若さを失いかけていた女性が、モルディブにやって来て、恋をした・・・【情熱的読書人間のないしょ話(521)】
太陽が照りつけていても、木陰に入ると涼しく感じます。地面に直径2cm足らずの小さな果実が落ちているので、見上げたところ、和ナシ(日本ナシ)の野生種・ヤマナシの大木でした。キウイがたくさん実を付けています。因みに、本日の歩数は10,938でした。
閑話休題、もし願いが叶うとしたら、どこで泳ぎたいかと聞かれたら、間、髪を入れず、インド洋のモルディブと答えます。
『モルディブ』(谷村志穂著、スターツ出版。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)は、著者が何度も滞在したモルディブでの経験を綴ったエッセイ集です。
「モルディブの島々と、それを取り巻く鮮やかな海が持っている力だった。モルディブとは不思議な土地だ。それは国でありながら、国家として迫ってくることもなく、島々の一つ一つも大洋の中の小さな浮き島でしかない。インド洋に浮かぶ大環礁地帯。珊瑚が、砕けて、白い砂になる。砂が寄せ集まって、島々をつくる、それはまるで渚のようだ、と書く人もいる」。
所々に挿入されたカラー写真が、また素晴らしいのです。著者が浅葱色の海に下半身を浸しながら微笑んでいる写真――「こちらの島からあちらの島へ歩いて渡る、夢のような時間」。海とココヤシの木陰のコントラストが印象的な写真――「この島の光の色はあまりに優しい。早く肌を焼いて、光に染まりたくなる、それが出かけるたびに思うこと」。
眩しく輝く太陽に救いを求めてモルディブにやって来た著者は、恋をします。「私が1998年の1年間、モルディブに通い続けた理由ははっきりしていた。私はもう若さを失いかけていて、その土地に反射する眩しいばかりの太陽のエネルギーに救いを求めていたのだ。同時に恋もした。私の心が探し出した相手は、太陽の光がもっともよく似合う、褐色の肌をした、私よりずいぶん年下のまだ少年のような人だった。恋といっても、ただ遠巻きに眺め続けただけだったようでもある。だが褐色の肌の人は、子供のような残酷さで私のことも通り抜けて行った」。
この失恋を癒やし、立ち直らせてくれたのも、モルディブの力でした。「男と女の間にも、確実に魔物は存在する。だったら、魔物は鎮めて先へ進む。たった一度の生涯なのだ、いたずらに憎しみあったり嫉妬にもがいたりせずに、愛だけ探しながら時を過ごしていける人生とは幸せではないか、と言っているような国」。
地球温暖化による海面の水位上昇の危機についても言及しています。「モルディブに限らない。モーリシャスやセイシェルや、世界の美しい島々が、近い将来海の中に沈んでいこうとしている。理由は、二酸化炭素ガスによる、地球の温暖化である。あのエメラルドブルーの海の中に、1200の島々が沈んでしまう。少しずつ水をかぶり、砂が流され、ココヤシの木が倒れ、海の中へと消えて行く。・・・本当に、そんな地球の宝物を、人間は沈めてしまってよいのだろうか」。