榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

商社トップを引退した男性が親しくなった20歳以上年下のキャディの正体・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1887)】

【amazon 『黄昏流星群(62)』 カスタマーレビュー 2020年6月13日】 情熱的読書人間のないしょ話(1887)

図書館のホールに、絵手紙が展示されています。先輩の遺影微笑む五月闇――榎戸臥龍。

閑話休題、コミックス『黄昏流星群(62)――遊星シンドローム』(弘兼憲史著、小学館)に収められている「星確スウィング」は、大手商社の社長、会長を務め上げ、妻が3年前に病死したため、現在は一人暮らしの71歳の大越が、メンバーになっている名門ゴルフ・コースで新米キャディに出会うところから物語が始まります。

大越の質問に、菊田美也子は、2年前に離婚し、一人息子は広島でサラリーマンになっているので、昨年9月からキャディをしていると答えます。

気が合った二人は食事を共にし、ゴルフ場を辞めた美也子が週に3回、家政婦として、大越のマンションに通ってくることになりました。

「仕事内容は掃除と洗濯。そして買い出しと夕食の支度。彼女は午後1時に来て夕方5時に帰っていく・・・3時の休憩時間は二人でコーヒータイム。実に快適な毎日だ」。

「しかし、腑に落ちないところが少なからずある。最初に近所のファミレスで偶然会ったけど・・・あれは『偶然』だったのか。あのあと、寿司屋に行って彼女は泥酔したが、泥酔しているわりには自分のマンションまでの帰り道を正確に私に教えた。ゴルフ場をクビになったあと、入れ替わるように、うちの家政婦になる・・・タイミングがあまりにもよすぎる」。

「そして先日、俺を自宅マンションに招いてくれた時、帰り際にキスをした。キスされて悪い気はしないが・・・20何歳も年の離れたこんなジジイに好意を持つのは、いかにも不自然だ」。

「つまり彼女は何らかの目的を持って俺に接近してきたのではないか。もしかしたら俺の財産目当てかもしれない。大企業のトップを10年近くやれば数億円の貯えはある。その辺はわかっているはずだ。この展開だと、そのうち男と女の関係になる。彼女の計算通りの展開になる」。

「でも考えてみろ。俺にとってそれは苦痛か? むしろ望んでいることじゃないのか? だったら、いいじゃないか。財産目当てでも・・・。自分が楽しかったら、たとえ文無しになっても構わない。財産を残したい奴なんか、いない。これが彼女の罠なら、彼女のハニートラップにとことんはまってやろうじゃないか・・・」。

そして、遂に、その日が来て、美也子の正体が、思いもかけない事実が明らかになります。