榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

それより辛いのは、あなたがいないということ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(534)】

【amazon DVD『ビューティー・インサイド』 カスタマーレビュー 2016年9月20日】 情熱的読書人間のないしょ話(534)

私がよく訪れる千葉・流山の紀伊國屋書店流山おおたかの森店の片隅に置かれている清水多嘉示作の「裸婦」は、いつもお澄まししています。

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閑話休題、韓国映画『ビューティー・インサイド』(DVD『ビューティー・インサイド』<ペク監督、ハン・ヒョジュ、パク・ソジュン、上野樹里出演、ギャガ)は、何とも奇妙な設定の恋物語です。

29歳の家具デザイナーの青年、キム・ウジンは、18歳の時から毎朝目覚めるたびに自分とは違う顔、声、体つきに変わってしまうようになりました。その変化は、男性、女性、若者、中年、子供、韓国人、外国人を問わず、本人も鏡を見ないとその日の顔がどんな顔か分からないという有様です。変わるのは外見だけで、心は変化しないので毎日大変ですが、今ではこういう異常状態に何とか対応できるようになっています。

ウジンは、ある日、大型家具店を訪れた際、てきぱきと感じよく客に応対している美しい女性に一目惚れしてしまいます。勇気を奮ってデイトを申し込み、夢見るような一時を過ごします。眠ると違う顔になってしまうので、ウジンは2晩寝ずに、3日連続でデイトします。お相手のホン・イスという名の29歳の女性もウジンに惹かれていきます。

しかし、いつまでも寝ないでいるわけにはいきません。ウジンは意を決して自分の顔が毎日変わることを白状します。イスは驚きますが、二人のデイトは続きます。

悩み抜いた末、ウジンが思い切ってプロポーズした時、イスは少し時間が欲しいと答えます。デイトは続きますが、イスが毎日違う男性とデイトしているという噂が広まってしまいます。

睡眠薬に頼るようになったイスが薬をのみ過ぎ病院に担ぎ込まれたことで、イスの悩みを知ったウジンは別れを告げ、外国へ旅立ちます。

10カ月後、二人は再会するのですが・・・。

愛するとはどういうことか、愛するとき重要なのは外見なのか中身なのか、他人の目が愛にどういう作用を及ぼすのか――という本質的な問いを突きつけてくる作品です。

「それより辛いのは、あなたがいないということ」というイスの言葉が、私の心の奥で木霊(こだま)しています。