ピーテル・ブリューゲルの絵には格言が隠し絵として潜んでいる・・・【情熱的読書人間のないしょ話(569)】
万葉集に登場する植物の観察会に参加しました。「秋風は 涼しくなりぬ 馬並めて いざ野に行かな 萩の花見に」。ヤマハギ(写真は、葉、実の2枚)が詠われているのは141首、ヨシ(アシ)は50首ほど、ススキは34首、クズは21首、イネは20首以上、ツユクサは9首、クヌギは6首、ハスは4首、ホオノキ(写真は、緑の葉、枯れ葉と実の2枚)は2首、カントウヨメナは2首、ヘクソカズラは1首――と、柳沢朝江さんから説明がありました。因みに、本日の歩数は14,539でした。
閑話休題、安野光雅は絵だけでなく、文章も魅力に溢れています。その安野が好きな画家たちについて綴ったエッセイ集が『会いたかった画家』(安野光雅著、山川出版社)です。本書にも安野らしい薬味がまぶされています。
ピーテル・ブリューゲル(父)についても熱く語っています。「ブリューゲルは農民の結婚式とか、農民の踊りなどを好んで描いたので農民画家といわれているという。しかし、そもそも農民画家という言い方は感心できない。その当時、農民と貴族のほかに誰がいたかと考えると、ほとんどの人が農民として生きていたのである」。
「『十字架をになうキリスト』の中では、キリストは十字架の重みに耐えられず、とうとう膝をついてしまう。そして『十字架をかつぐのを手伝え』といわれたシモンが兵士に連れていかれそうになるのを、その奥さんが命がけで行かせまいとする場面が描かれている。この夫人の喉元へ、槍を向ける兵士が左手前にいる。これは言われてみないとわからない」。
著者は、ブリューゲルの絵は、あらゆる場面に格言が隠し絵となって鏤められているというのです。当時は文字を読めない人が多かったので、絵が字の役割を果たしていたというのです。
「十字架をになうキリスト」だけでなく、私の好きなブリューゲル作品の「農民の婚礼の踊り」、「婚宴の踊り」、「農民の婚宴」、「農民の踊り」などについても、隠し絵をじっくりと探したくなりました。