榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

かわいがっていた熊に愛する妻を殺された猟師の呻き・・・【情熱的読書人間のないしょ話(598)】

【amazon 『羆(ひぐま)』 カスタマーレビュー 2016年11月26日】 情熱的読書人間のないしょ話(598)

千葉・印西の亀成川の周辺を巡る散歩会に参加しました。分かり辛いかもしれませんが、絶滅危惧種のタナゴ(モリオカエ)をカメラに収めることができました。キンクロハジロたちが悠々と泳いでいます。イノシシの沼田場(ぬたば。体に付いたダニなどを落とすために泥を浴びる場所)が見つかりました。この辺りはイノシシが多いということで、イノシシ除けの電気柵をあちこちで見かけます。試しに触れてみたらビリッときました。リンドウの青い花がひっそりと咲いています。青いアオツヅラフジの実を割ると、アンモナイト状の種が現れました。シイタケの榾木(ほたぎ)がたくさん積み上げられています。木下(きおろし)貝層、木下地区で出土した古墳時代の埴輪(人物、馬、水鳥)を見ることができました。竹袋稲荷神社の石段は趣があります。女人講が建てた、明治17年(向かって左)と明治31年の銘のある子安観音が並んでいます。小さな姉妹が母親を手伝って落ち葉掻きをしています。因みに、本日の歩数は22,563でした。

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閑話休題、『羆(ひぐま』(吉村昭著、新潮文庫)は、吉村昭の動物小説集ですが、収録されている『羆』からは、かわいがっていた熊に愛する妻を殺された伝説的な猟師・銀九郎の呻きが聞こえてきます。

「銀九郎は、名の知られた熊撃ちの猟師だった」。「22年間、かれは毎年熊を仕留めた。100貫を越える巨大な雄熊をとって、近隣の話題になったこともある。かれは、人付き合いの少ない偏狭な猟師だった。ハンターや大半の猟師がライフル銃を携行するようになっても、かれは昔通りの村田銃しか使わなかった」。「しかし、3年前に光子を妻として迎え入れた時から、かれは山へ入ることをやめてしまった。その理由をかれは口にしなかったが、村落の者たちは、結婚後はじめた小さな土産物店が忙しくなったためだろうと解釈した」。

権作と名付け、銀九郎が仔熊の時からかわいがってきた熊が逞しく成長したのを、店の前の檻で客寄せに使っていたのですが、その権作が餌をやろうとした光子の華奢な首をへし折ってしまったのです。42歳まで独り暮らしをしてきた銀九郎にとって、容貌も体も瑞々しい28歳の光子は愛おしくて堪らない存在でした。彼が猟を止めたのも、たとえ一日たりとも光子と離れては過ごせないという思いからだったのです。

「妻を殺した権作に対する銀九郎の憎しみははげしく、必死になって権作を追うだろう。そして、自分の持つすべての勘と技倆をかたむけて権作を撃ち殺すにちがいなかった」。「かれは、権作に裏切られた自分を恥じると同時に、妻を惨殺した権作を必ず自分の手で射殺したいと思った」。

権作を探し回る2年がかりの息詰まるような追跡が展開されていきます。

もし、自分が銀九郎の立場だったらと、思わず考え込んでしまいました。