性的に何でもありの凄まじい人生を送った男と女・・・【情熱的読書人間のないしょ話(620)】
【amazon 『異端者』 カスタマーレビュー 2016年12月21日】
情熱的読書人間のないしょ話(620)
18歳のハンナ・アーレントが、マールブルク大学で35歳の哲学者、マルティン・ハイデガーと出会った時、二人はたちまち恋に落ち、この不倫関係は断続的に生涯続きます。アーレントもやがて哲学者・思想家として大輪の花を咲かせますが、この写真はハイデガーと知り合った翌年頃撮影されたものです。
閑話休題、『異端者』(勝目梓著、文藝春秋)を読んで感じたのは、つくづく、読書とはもう一つの人生を味わうことだなということです。
72歳の主人公が、終の栖と思い定めた南房総のくたびれたマンションの一室で、自分の人生を振り返るという形式を採っていますが、その過去たるや、性的に何でもありの凄まじいものなのです。
母子相姦、同性愛、SMなどを経て、現在は、若い時分から因縁のある2歳年上の女性が時たま訪ねてくるだけの生活を送っています。「誠一郎さんもあたしも、蛸壺を抱えたままの長い人生だったわね。誰のせいでもないんだけと・・・」。「そうだな。おれのは特に、屑とも呼べないようなひどい人生だった。だけど自殺する勇気がなかったおかげで、図々しくなんとか生き延びてきたわけでさ。とにかく生きてきた。それだけでいいじゃないかって、いまは思ってるんだ」。
数時間をかけてまで、もう一つの人生を味わうなんてご免だぜという人は、本書に近づかないほうがいいと忠告しておきます。いや、そう言われても味わいたいという向きは、勝手にどうぞ。