私をジャムにしたならどのような香りが立つかブラウスを脱ぐ・・・【ことばのオアシス(34)】
【薬事日報 2010年6月2日号】
ことばのオアシス(34)
私をジャムにしたならどのような香りが立つかブラウスを脱ぐ
――河野小百合
甘い香りが漂ってくるような、妙に魅力的な短歌である。俵万智は、この歌を「今の自分を果実にたとえるなら、ジャムにできるぐらいよく熟れている、という意識があるだろうし、また、自分という果実を、これから食べようとしている相手の存在も、見え隠れする」、「たぶん、セックスの前の一場面をとらえた歌だろう。とことん愛されている、いや、愛し合っているという自信がなくては、こうはなれないなあと思う。エロティックではあるのだけれど、そこに前向きの明るさが漂うところも、一首の魅力だ」と評している。全く同感である。歌集『私をジャムにしたなら』(本阿弥書店)所収。
戻る | 「ことばのオアシス」一覧 | トップページ