たとえ全世界に君臨するアウグストゥス皇帝が私を結婚の相手に足るとされ、私に対して全宇宙を永久に支配させると確約されましても・・・【ことばのオアシス(37)】
【薬事日報 2010年7月2日号】
ことばのオアシス(37)
たとえ全世界に君臨するアウグストゥス皇帝が私を結婚の相手に足るとされ、私に対して全宇宙を永久に支配させると確約されましても、彼の皇后と呼ばれるよりはあなたの娼婦と呼ばれる方が私には愛しく、また価値あるように思われます。
――エロイーズ
著名な愛の往復書簡集『アベラールとエロイーズ』の一節。若く、才色兼備のエロイーズの手紙は、女性が書き得た最も激しい愛の言葉に満ちている。極めて情熱的で、官能的でさえある。彼女の生きた時代が宗教と慣習でがんじがらめの中世であることを思えば、これは驚くほど率直な愛の表白と言えよう。この手紙は、私たちに「言葉が情熱の記号であること」を思い起こさせる。
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