榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

家族とは何かを考えさせられるテレビドラマ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(739)】

【amazon DVD-BOX『それぞれの秋』 カスタマーレビュー 2017年4月28日】 情熱的読書人間のないしょ話(739)

ダイサギが小魚を捕らえる瞬間を目撃することができました。思いがけない所で、花を包む白い大きなハンカチのような苞葉をたくさん付けているハンカチノキに出くわしました。因みに、本日の歩数は17,204でした。

私が一番好きな脚本家は山田太一です。そして、山田作品の中で、とりわけ気に入っているのは、『それぞれの秋』と『高原へいらっしゃい』です。彼の代表作とされる『岸辺のアルバム』ではないところに、私の天の邪鬼ぶりが表れています(笑)。

それぞれの秋』(DVD-BOX『それぞれの秋』<山田太一脚本、井下靖央・阿部祐三演出、小林桂樹・小倉一郎・久我美子・林隆三・高沢順子・桃井かおり出演、TCエンタテインメント。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能>)は、1973年に15回に亘って放送されたテレビドラマです。一見平穏な家庭の中に埋もれていた深刻な問題が徐々に露わになっていきます。1977年の『岸辺のアルバム』の先駆をなすような位置づけの作品ですが、この物語では多摩川水害で自宅が流れ去ってしまうというような大事件が起こらないだけに、余計、平凡な日常生活に潜む怖さが胸に沁みこんでくるのです。

物語の前半は、高校生の妹が不良グループに入ってしまうとか、語り手でもある三流大学生の次男が痴漢行為をしてしまうとか、セールスマンの兄が子供のいる年上女性と結婚したいと言い出すとか、部長補佐の父が上司から私的に頼まれた件で大きな借金を抱え込んでしまうとか――てんでんばらばらな家族関係が描かれていきます。気は弱いが、人が好く家族思いの次男が舞台回しを務めています。

後半に入ると、一家は突然、奈落の底に突き落とされます。父が手術困難な脳腫瘍と診断されてしまったからです。

この危機に直面し、家族が力を合わせて乗り越えようという気運が高まります。ところが、父の病状が一段と進行し、これまで心の底に堆積してきた不満・悪態を家族たちに浴びせたり、入院先の美人看護師に無理矢理キスしようとするという状態が起こります。

新たな段階を迎えて、家族はどう行動したのか・・・。

昭和40年代が舞台ですが、時代を超えて、家族とは何かを考えさせられる作品です。