二組の夫婦に、これでもかと言わんばかりに次々と襲いかかる不幸・・・【情熱的読書人間のないしょ話(788)】
あちこちで、さまざまな色のユリが咲いています。ツリガネズイセン、アガパンサス、ツルバキアが紫色の花を付けています。芳香を放つニオイバンマツリは、咲き始めは紫色ですが、やがて白色に変わっていきます。因みに、本日の歩数は10,731でした。
閑話休題、正直に白状すると、映画『別離』(DVD『別離』<アスガー・ファルハディ監督、レイラ・ハタミ、ペイマン・モアディ、シャハブ・ホセイニ、サレー・バヤト出演、Happinet>)には、見始めてから見終わるまで、いらいらさせられっぱなしでした。
イランのある一家でのこと、外国に移住して一緒に暮らそうと言い出した妻に、同居しているアルツハイマー病の父を置いてはいけないと夫が拒絶したことから、夫婦に離婚の危機が訪れます。そして、妻の家出以降、この一家に次から次へと不幸が襲いかかります。
父の介護のために雇われた家政婦が働き始めるのですが、この家政婦の一家にもいろいろな問題が潜んでおり、やがて、両家が刑事事件で告訴し合うという事態に陥ります。それぞれが抱える秘密や嘘が複雑に絡み合い、ミステリアスな展開となります。
最後のシーン――両親の離婚で、これからどちらと一緒に暮らすか選択を迫られた11歳の娘が仲裁人に回答する間、室外に出された夫と妻が離れて長椅子に腰掛け、娘の決断を待っている――で流れる音楽が、何とも素敵でした。
イランという遠い国での出来事なのに、映画の中での虚構とはとても思えず、ぐいぐいとストーリーに引きずり込まれてしまったのは、現代のイラン映画界を代表する監督で、映画賞を総嘗めにしているアスガー・ファルハディの実力のなせる業でしょうか。
今後、いらいらすることに遭遇したら、この作品を見直したいと考えています。この映画から与えられる圧倒的ないらいら感が、現実のいらいら感など吹き飛ばしてくれるでしょうから。