榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

君だって、いつ逮捕されるか分からないぜ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(839)】

【amazon 『警察捜査の正体』 カスタマーレビュー 2017年8月7日】 情熱的読書人間のないしょ話(839)

散策中、桃色の縁取りがある白い星形の花をびっしりと付けているペンタス・ギャラクシー・パープルスターを見かけました。ドイツアザミが薄紫色の大輪の花を咲かせています。橙色のキバナコスモスが咲き始めています。鮮やかな橙色の花を咲かせたアフリカンマリーゴールドがすっくと立っています。ハイビスカスの黄色い花、赤紫色の花が目を惹きます。赤い花のモミジアオイも頑張っています。毎朝、早くからカワラヒワの囀りに起こされています。因みに、本日の歩数は10,373でした。

閑話休題、『警察捜査の正体』(原田宏二著、講談社現代新書)には、恐ろしいことが書かれています。

あなたが、万一、いわれのない疑いをかけられ警察に逮捕されてしまったとき、どうすればいいのでしょうか。「いち早く、地元の弁護士会か人権派といわれる弁護士に相談することが肝要である。しかし、人権派と言われる弁護士はさほど多くはない。今、市民に必要なのは、日ごろから、警察の犯罪捜査に関する実態を知るほか、任意同行に対する拒否、供述拒否権など、自らが持っている最低限の法律上の権利を知り、実践することだ。それが冤罪被害に遭わないための方策であり、警察の犯罪捜査の適正化を実現する道でもある」。

北海道警察の元幹部の書だけに、説得力があります。「私には、テロの防止、凶悪犯人逮捕という大義名分のもと、『警察国家』への道が強化されつつあるように見える。元警察官として、危険な兆候を感じている。このままでは市民に対する監視が一層強化され、ある日突然、普通の市民である読者が冤罪事件に巻き込まれる事態になる可能性が増しているのだ」。

警察の裏の顔・公安警察が息を吹き返していると、著者が警を発しています。「実働部門のうち、地域から交通までの各部門を警察の表の顔とするなら、警備・公安部門は裏の顔である。戦前の特高警察の流れを汲むとされる警備・公安警察の実態は国民には知らされていない。いわば秘密警察的存在である。警備・公安部門の本来の業務は、日本共産党等の革新団体に警察のスパイを設定することにある。その警備・公安警察も、日本共産党や過激派集団等が活発に活動していた時期には隆盛を誇ったものの、そうした勢力が衰退に向かうに従って凋落に向かった。そこに起きたのが2001年9月11日のアメリカ同時多発テロ事件だ。その結果、新たな集団へのスパイ獲得作戦の実態が明かるみに出た。2010年10月に発覚した警視庁公安部外事第3課の内部資料がインターネットに流出した事件だ。この抽出により、外事警察が日本国内のイスラム教徒をテロリスト予備軍とみて、様々なやり方で監視活動や情報収集活動を展開していたことが明らかになった。・・・2015年11月のパリでの同時多発テロ事件は、2001年ニューヨークでのテロ級の衝撃を世界に与えた。多くの国々がテロとの戦いを宣言し、日本政府もその一翼となっている。警備・公安警察は、こうした流れをチャンスとばかり、市民監視を強めると思われる。すでに共謀罪の制定も取りざたされている。2014年成立した特定秘密保護法同様、これも警備・公安警察の権限強化法制である」。付言すれば、2017年7月11日に、「共謀罪」の名称を「テロ等準備罪」に変えた改正組織犯罪処罰法が試行されています。

「(特定秘密保護法で)見逃してはならないのは、秘密漏えい罪等の捜査を警察、警備・公安警察が担う点だ。そのほか、特定秘密取扱者の適性評価制度は、特定秘密保護法を所管することになるであろう警備・公安警察の情報収集活動にも新たな権限を付与することになる。特定秘密保護法は明らかに警察権限、とりわけ警備・公安警察の権限強化法だ」。特定秘密の指定対象である「特定有害活動の防止」と「テロリズムの防止」の業務は、戦前の悪名高い特高警察の流れを汲むとされる警備・公安警察が担当するのです。「警備・公安警察は、市民運動を違法行為に発展するおそれのある『大衆運動』の一つとしてとらえ、関係者を監視下に置き情報収集の対象としている」。

また、「何が特定秘密なのかを知らされないまま、情報開示を求める国民は危険に晒されることになる。同法が権力機関たる警察の更なる腐敗と暴走の危険性を高めるのは確実だ。同法により警察の隠蔽体質は強まり、警察行政の闇は一層深まるだろう」。

「政府が国民一人ひとりの思想や行動を監視し、自由を取り締まるような体制を警察国家と呼ぶ。反戦、反改憲、脱原発等の市民運動、オンブズマン活動等、政府の方針に反対し、批判するような市民運動やマスコミ報道は、警備・公安警察の厳重な監視下に置かれ、捜査の対象となる可能性がある」。

特定秘密保護法やテロ等準備罪は自分には関係ないと、あなたがやり過ごしているうちに、日本は警察国家――常時、監視され、突然、いわれのない疑いをかけられ逮捕される――への道を着々と、しかも密かに歩んでいる恐ろしい実態を、本書が教えてくれました。