西郷隆盛が伝えたかったこと・・・【情熱的読書人間のないしょ話(888)】
散策中に、薄紫色の花を咲かせているヤブランを見かけました。マメアサガオが小さな白い花を付けています。ムクゲとフヨウの花は、よく似ていますが、葉が小さいのがムクゲ、葉が大きいのがフヨウです。シロバナマンジュシャゲも頑張っています。すっかり秋らしい空になってきました。因みに、本日の歩数は10,223でした。
閑話休題、西郷隆盛について書かれた本を読むと、『南洲翁遺訓』に言及していることが多いので、西郷がどういう言葉を遺しているのか気になり、『南洲翁遺訓(新版)』(西郷隆盛述、猪飼隆明訳・解説、角川文庫)を手にしました。
『南洲翁遺訓』は遺訓41条と追加2条で構成されていますが、第21条の「敬天愛人」、第30条の「官位も金もいらぬ人は、仕抺に困るもの也。仕抺に困る人ならでは、国家の大業は成し得られぬ」、追加第2条の「春秋左氏伝を熟読し、助くるに孫子を以てすべし」が、強く印象に残りました。
第21条について。「人が踏み行うべき道は、天から与えられた道理であって、上に天があり下に地があるように、当たり前の道理であるから、学問の道は天を敬い人を愛するということを目的として、身を修め、つねに己に克つこと(意志の力で自分の衝動や欲望を制御すること)に努めなければならぬ」。手柄を立て名を知られるようになると、知らぬ間に己を甘やかす心が生じ、驕り高ぶるようになりがちだが、そのようになってはいけない、と戒めているのです。
「敬天愛人」が、中村正直の『西国立志編』(サミュエル・スマイルズの『セルフ・ヘルプ』を訳したもの)に由来するという説が紹介されています。「この中村の『西国立志編』は随分読まれた本であるから、西郷もそれを手にして、啓示を受けた可能性は大きい。しかし、西郷は、あくまでも儒教の中にそれを消化して、『敬天愛人』と西郷の言葉で表現したとみるのが妥当だろう。だからこそ、西郷は、『敬天愛人』のあとに、『克己』を課題として提示して、その極意を『論語』で説明するのである」。
第30条について。「命を惜しいとは思わない、名誉などもいらない、官位も金もいらないという人物ほど、権力からみて、手に負えないものはない。このような手に負えない人物でなければ、どんな苦しいことにも打ち克って、国家の大業を成し遂げるということはできないものだ」。志を得て世に用いられたなら、民と共に正道を歩み、用いられないときは、一人ででも正道を歩んでいけ、どんなに貧乏してもこの志は変えるな、と諭しているのです。
追加第2条について。「いやしくも現今の万国対峙の形勢について知りたいと思うなら、『春秋左氏伝』を熟読するのがよい。そして、孫子をその補助とするのがよい」。『春秋左氏伝』から歴史を学べ、義を学び取れ、と言っているのです。