欲を抑える、何事も腹八分目を守る――これが貝原益軒の長寿の秘訣だ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(913)】
群生したセイタカアワダチソウが黄色い花を咲かせています。セイタカアワダチソウは秋の花粉症の犯人扱いされてきましたが、真犯人はブタクサで、セイタカアワダチソウは濡れ衣を着せられてきたのです。セイタカアワダチソウは昆虫の媒介によって受粉する虫媒花で、風が媒介する風媒花ではありません。ハクチョウソウ(白蝶草。ヤマモモソウ、ガウラ)も頑張っています。
閑話休題、『自由訳・養生訓』(貝原益軒著、工藤美代子訳・解説、洋泉社・新書y。出版元品切れだが、amazonなどで入手可能)は、江戸時代だというのに83歳という長寿を保った儒学者・貝原益軒が著した『養生訓』の解説書です。
『養生訓』は、元来、虚弱体質だった益軒が、自らの体験を踏まえて、82歳の時に出版した実践的健康法の書です。
益軒の教えは、3つにまとめることができます。第1は、欲――物欲、金銭欲、出世欲、色欲など――を抑える、第2は、何事も腹八分目を守る――これが長寿の秘訣だというのです。そして第3は、子供は甘やかさずに育てよです。
具体的なアドヴァイスの中で、私の印象に残ったのは、
●朝寝坊は万病のもと
●酒はほろ酔いが一番
●食事は控えめに、淡白なものを
●いい医者を選べ
●養生とは予防医療と見つけたり
です。
益軒の夫婦愛には心を打たれました。「花嫁はなんと16歳という初々しさでした。夫たる益軒は38歳ですから親子ほどの歳の違いでしたが、二人はこの先、最晩年まで仲むつまじく生涯を共にしました。・・・(妻の初は)若い時分から優れた能力を発揮して、しばしば夫の日記や雑記帳の整理を手伝ったり、朱子学のノートの代筆まで手助けしたといわれます」。
益軒が無類の旅好きであったことには、驚かされました。「藩の役所仕事に疲れると益軒は旅に出ます。諸国行脚こそは彼の気を養う手段だったといえるでしょう。・・・50代からは特に多くの旅に出たことが紀行集の多さからうかがえます。『京畿紀行』(50歳)、『吾嬬路記』(57歳)、『厳島図並記事』(59歳)、『熊野路記』(64歳)、『筑前国風土記』(73歳)、『岐蘇路記』(79歳)、『有馬名所記』(81歳)。これらは益軒の著作のほんの一部にすぎません」。