裕福な家の子、貧しい家庭の子、学級委員の女の子――の、その後の人生・・・【情熱的読書人間のないしょ話(974)】
ルドルフ・トイスラーは東京・中央の聖路加病院(現・聖路加国際病院)の創設者です。院内に、「ルカの福音書」で知られるルカの像が置かれています。この辺りは、解体新書が翻訳された場所であり、慶應義塾発祥の地です。横綱審議委員会の北村正任委員長が、横綱・白鵬の相撲の取り口について「美しくない、見たくない」と発言しましたね。女房は以前から、白鵬の張り手は卑怯よ、と言っておりました。私は、白鵬の行っているような張り手やかち上げは不可とルールで定めるべきと考えています。因みに、本日の歩数は14,151でした。
閑話休題、コミックス『黄昏流星群(55)――嶺上恒星』(弘兼憲史著、小学館)に収められている「不輝の星」は、88ページしかないのに、分厚い長篇小説を読み終わったかのような充実感を覚えました。
昭和32年の東京・台東区で、物語の幕が上がります。比較的裕福な家の子・梶谷勝と貧しい家庭の子・金山サトルは、大の仲良しです。他の生徒たちがサトルに冷たい態度をとる中、勝と学級委員の戸倉衣里だけはサトルに優しく接してくれます。
1年後、サトルの両親が北朝鮮に行くことになり、サトルは和歌山の親戚の家に引き取られていきます。
32年後、突然、サトルが勝の前に姿を現します。そこそこの小説家になっている勝は衣里と結婚しており、サトルは和歌山の串本で魚の養殖業を営んでいます。
「いやあ・・・でも二人が結婚してるなんて思ってもみなかったなあ」。「知ってるか、衣里。サトルはキミのことが好きだったんだぞ」。「えー。そんなこと全然知らなかったわ」。「キミのことは『きれいで神様みたいな人だ』と言ってた」。「勝ちゃん、やめてくれよ。恥ずかしいよ」。「金山クンは結婚してるの?」。「いや、中学を卒業してから働きづめで・・・結婚なんて考えるヒマもなく今に至っている。だから独身」。
勝と衣里が和歌山の金山水産株式会社を訪問した帰りの列車の中で。「でも人生ってわからんものだな。あんなにバカにされて苛められていたサトルが、こんなに出世するなんて・・・」。「そうね、おそらくあの時のクラスの中では一番お金持ちだわ」。
それから暫くした、ある日。「あなた」。「お、どうした?」。「私、別れたいの。あなたと」。
勝と衣里の離婚から28年後の6月のある日、独り暮らしの勝をサトルの妻と名乗る女性が訪ねてきます。そして、彼女は驚くべきことを語り出すではありませんか。
友情、恋情、時間・・・、人生について考えさせられてしまいました。