榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

著者が挙げた教養を身につける方法53のうち、私は52には賛成です・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1257)】

【amazon 『なぜあの人は「教養」があるのか。』 カスタマーレビュー 2018年10月1日】 情熱的読書人間のないしょ話(1257)

落花狼藉――我が家のキンモクセイに対する、昨夜の台風24号の仕業です。

閑話休題、『なぜあの人は「教養」があるのか。――大人の教養を身につける53の具体例』(中谷彰宏著、水王舎)は、教養を身につける方法が53挙げられています。この著者特有の直截な物言いが心地よい一冊です。

●学校の勉強ができても、教養があるとは言えない。「知識がいくら積み重なっても、教養にはなりません。・・・教養とは、全体を把握した世界観です。・・・体系的な知識と同様に、圧倒的な体験が必要なのです」。

●教養がないと、一流になれない。「一流の教養を身につけるには、一流になるための教養の勉強をすればいいのです。・・・教養のある人は、時間をかけて教養をつけるための勉強をしています」。

●一流の革命家もIT経営者も、教養を身につけている。「IT経営者はよくTシャツを着ているので、一見、教養とはかけ離れているように感じます。マーク・ザッカーバーグは、自分が読んだ本の中で『今年の本』として選ぶのは教養書ばかりです。『歴史序説』、『国家はなぜ衰退するのか』、『サピエンス全史』、『宗教的経験の諸相』、『無限の始まり』など。・・・実際は、スティーブ・ジョブズにしてもみんな教養書を読んでいます。IT経営者は、日常的にITを使っていないということです。IT技術を編み出すために教養を身につけているのです。リーダーになれるかどうかは、教養が分かれ目になるのです」。

●教養とは畏(おそ)れることだ。「教養とは、リスペクトを持つことです。・・・『リスペクト』を漢字一文字であらわすと、『畏』です。・・・教養のある人間は、謙虚になります。崇高なものに対して畏怖の念を持つからです。美しいものは、同時に怖いものでもあります」。

●情報より、教養で差がつく。情報時間より、教養時間を持つ。「1日24時間は『情報時間』と『教養時間』とに分かれます。情報時間ばかりの人は情報化社会では勝てません。ビル・ゲイツは、一人でいる時は本を読んでいます。ネットサーフィンはしていません。だから勝てるのです。怖いのは、スマホをずっと見ていることです」。

●言葉は、教養のエッセンスだ。言葉のレベルで、教養の差がつく。「教養のある人かどうかは、ひと言離せばわかります。一つは、教養的なネタで話せるかどうかです。もう一つは、そもそも使う言葉が違うのです」。

●教養を身につけたいなら、教養が身につく勉強と体験をすればいい。「教養を身につけるには、お金がかかります。そのお金をケチったら、教養は身につきません。お金で教養を身につけるか、お金を貯金でとっておくかの違いだけです」。

●教養は、精神を登高させる。「教養が身につくと、人間はメンタル力が強くなります。教養とメンタルは、一見、関係なさそうですが、教養のある人はメンタル力がアップしていくのです」。

●教養を身につけることで、自分自身を知ることができる。「余白の美が日本人の美です。生け花とフラワーアレンジメントの違いも同じです。フラワーアレンジメントは空間を埋めます。生け花は空間をつくります。『足し算』のフラワーアレンジメントと『引き算』の生け花とで分かれるのです」。この見事な説明を受けて、私が假屋崎省吾の作品に違和感を覚える理由が分かりました。

●教養とは、見えないものを感じることだ。「教養社会は『見えないもの』を重視します」。

●教養とは、日常のものに美を感じる心だ。「美しいものを見るのではなく、『美しさを感じる心』を持つことが大切です。美しさを感じる心が、教養です」。

私が著者に賛成できない唯一の項目があります。それは、「●美的感動は、神を感じることだ。教養を身につけると、信心深くなる」です。著者に倣って、直截な物言いになってしまいました。