瀬戸、常滑、越前、信楽、丹波、備前の窯の魅力満載の大型写真集・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1742)】
モズの雌、ツグミ、ヒヨドリ、ハシブトガラス、カイツブリ、コガモの雄、オナガガモの雄、水浴びするカルガモ、地上で餌を啄むオオバンをカメラに収めました。因みに、本日の歩数は10,962でした。
閑話休題、写真集『六古窯を訪ねる――瀬戸・常滑・越前・信楽・丹波・備前』(森孝一監修、藤森武写真、平凡社・別冊太陽)には、古窯の魅力が満載です。
六古窯(ろくこよう)とは、何なのでしょうか。「これまでに、全国各地で発見された中世古窯の数は87ヵ所といわれる。広域を商圏とした大窯業地から、在地の需要に応じた小規模なものまで、様々な窯業形態が知られているが、その中でも、現在まで1000年にもわたり絶えることなく継続している、瀬戸・常滑・越前・信楽・丹波・備前の6つの窯業地を『六古窯』と呼ぶ」。
六古窯の発生の流れが図で説明されています。12世紀に誕生した常滑焼が多くの窯の父的存在で、そこから12世紀後半に越前焼、信楽焼、丹波焼が派生しました。13世紀前半には、中国陶磁の影響を受けた瀬戸焼が、13世紀後半には、唯一,須恵器の流れを汲む備前焼が誕生したのです。恥ずかしいことに、私は、瀬戸焼というのは瀬戸内海地方のやきものと思い込んでいたが、愛知県瀬戸市とその周辺のものであることを。本書に教えられました。
●瀬戸=つややかに流れる釉薬と、均整のとれた輪郭。踊るように器肌を流れていく草花の文様・・・。瀬戸焼は六古窯の中にあって、最も高貴で、優雅なやきものかもしれない。気高くたたずむその肌に、そっと触れてみたくなる。
●常滑=現存する日本最古の窯場であり、『六古窯の父』とも呼ばれる常滑焼。なかでも大甕や大壺は、古武士のような力強さと、雄渾なおおらかさが魅力だ。その堂々たる容貌に、心奪われる蒐集家が後を絶たない。
●越前=日常雑器を造ることが多かった越前焼は、庶民が自分たちの生活を少しでも楽にしたい、豊かにしたいという願いを込めて造られてきた。健康的で素朴な明るさと、粘り強さのあるやきものには、越前の人々の心が映し出されている。
●信楽=六古窯の中でも、熱烈な愛好家をもつ信楽焼。無釉で堅く焼き締められた器肌には、独特の火色、焦げ、灰かぶりが表れ、千変万化の表情を見せてくれる。土そのものが語りかけてくるような、枯淡な魅力がそこにある。
●丹波=炎とともに吹き付けられた美しい自然釉が、丹波焼独特の土味と相まって見せる大胆な景色。大衆の生活器として、造りやすく使いやすく焼き続けられた丹波焼は、用の美を体現し、美しさとは何かを私たちに問いかける。
●備前=釉薬を使わず、過度な線刻も行わない。そこにあるのは、人と土と炎との出合いであり、窯を通して造りあげられる『火の芸術』である。焼き締められた土味は鉄と見紛うばかりの堅牢さで、私たちの視線に対峙する。
六古窯の数々の作品だけでなく、それぞれの窯を知るためのQ&A、それぞれの窯の風土、それぞれの窯の見どころ――も充実しているので、初心者も十分愉しめます。
手元に置いて、折に触れて見返したい大型写真集です。