榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

ぼくが拾ってきた木のかけらは、何とセミクジラだった・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1744)】

【amazon 『セミクジラのぬけがら』 カスタマーレビュー 2020年1月23日】 情熱的読書人間のないしょ話(1744)

ワキン(和金)から品種改良されたリュウキン(琉金)が、ゆったりと泳いでいます。数年前まで、週に1回は、クロールで休憩せずに連続で2,000m泳いでいたことを、懐かしく思い出してしまいました。因みに、本日の歩数は10,328でした。

閑話休題、『セミクジラのぬけがら――ミッチの道ばたコレクション』(如月かずさ作、コマツシンヤ絵、偕成社)は、自由奔放に発想を飛ばしまくった、荒唐無稽とも言える絵物語だが、小学生の男の子・ミッチと父親とのほのぼのとしたやり取りが、いい味を醸しています。

「『セミのぬけがら、はっけ――ん!』。なつやすみ まっさいちゅうの、プールのかえり道。・・・ひろったぬけがらを、だいじに ポケットに しまったあとで、ぼくは すぐそばのじめんに、なにかが おちているのを みつけた。手のひらに のるくらいの、ひらべったくて 黒っぽいかたまり。たぶん これ、木のみきから はがれておちた、木のかけらだ。それにしても、かわったかたちだなあ」。ぼくは、クジラみたいな形をした木のかけらを家に持ち帰ります。

こぼした麦茶で濡れた木のかけらを見て、ぼくはぎょっとします。「むぎ茶のかかった 木のかけらが、むくむくと ふくらみだしていたんだ。ひらべったかったのが ふくらんで、ますます クジラそっくりの かたちになる。色も つやつやした 黒に かわっていた。これはもう、木のかけらなんかじゃない。小さな小さな ほんものの クジラにしか みえない。だけど、木のかけらが クジラになるなんて、そんなこと あるのかな・・・。ぼくが おそるおそる、ゆびで つついてみようと していると、クジラが ぱちりと 目をあけて、つくえのうえを ぴちぴち はねだした」。

「クジラは 金魚ばちのなかを げんきに およぎはじめる。金魚たちが びっくりしてたけど、クジラは べつに 金魚をいじめたりは しないみたいだった」。

「ぼくが ためしに セミのぬけがらを ちかづけると、クジラは いきおいよく 水中から かおをだして、ねけがらを ぱくりと たべた。それから、パリパリ、ごくん、とぬけがらを のみこんで、あたまのうえから しおをふいてみせる。ごちそうさまって、うれしそうに。『セミのぬけがらが すきなんだ・・・』」。

ぼくがセミクジラと名づけたこのクジラは、ミ~ンミンミンミンとセミそっくりに鳴いたり、ぼくの掛け声でジャンプやヘディングをしたり、脱皮して、背中にセミみたいな透明な翅の生えた巨大なクジラとなって空を飛んだりと、もう、作者のやりたい放題です。

本書のおかげで、頭が少し柔らかくなったような気がします。大人も楽しめる絵物語ですよ。