榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

密会相手の人妻から指定された再会場所で、騎士が目にしたのは―― ・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1859)】

【amazon 『ドイツ怪談集』 カスタマーレビュー 2020年5月16日】 情熱的読書人間のないしょ話(1859)

フサゲイトウ(さまざまな色)、アフリカン・マリーゴールド(橙色、黄色)、マンデヴィラ ‘サン・パラソル’(赤色)、サルヴィア(紫色)の花が咲いています。

閑話休題、『ドイツ怪談集』(種村季弘編、河出文庫)に収められている『騎士バッソンピエールの奇妙な冒険』(H・V・ホーフマンスタール著、小堀桂一郎訳)は、ペストが猖獗を極めるパリを舞台に、騎士と人妻とのアヴァンチュール(恋の火遊び)の思いもかけない結末が強烈な印象を与える短篇です。

「私」は、小間物屋の粋な若女房と逢い引きをすることになります。「馬を進めながら、私は供廻りに、私があの女とあいびきできるような場所をどこか知らないかと聞いてみた。その男が答えて言うには、あの女をある取持ち婆さんの家へ連れて行っておきましょう、と言う」。

「その晩私が出かけてゆくと、年の頃は二十(はたち)ばかりの相当な器量好しの女房がベッドに腰をかけていて、そばに丸めた背中を頭からすっぽりと黒い布で包んだ取持ち婆さんが、何かしきりに女に言いふくめている様子だ。・・・その若妻はつぶらな眼でじっと炎に見入っている。そのちょっとした身のこなし一つで、女はそのいやらしい婆さんから何千里もの彼方に距立った存在になっているのだった」。二人は官能的な一夜を過ごします。

そして、翌朝、3日後の深夜に、彼女の伯母の家で再会することを約して別れます。

彼女から教えられたその家の部屋で、私が目にしたのは――。あまりの凄まじさ、恐ろしさに息を呑んでしまいました。