榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

妖しくも不思議な短歌の魔力に酔い痴れる・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1966)】

【読書クラブ 本好きですか? 2020年9月1日号】 情熱的読書人間のないしょ話(1966)

川沿いの叢では、ショウリョウバッタがチョウリョウバッコ(跳梁跋扈)しています(笑)。トノサマバッタ(写真1)、クルマバッタモドキ(写真2)、ショウリョウバッタ(写真3)、オンブバッタの雌(写真4、5)、ハネナガイナゴ(写真6、7)、マメコガネ(写真8)をカメラに収めました。アフリカハマユウ(インドハマユウ)が薄桃色の花を咲かせています。ホウキギ(ホウキグサ、コキア)の茎葉が緑色に輝いています。

閑話休題、『念力レストラン』(笹公人著、春陽堂書店)に収録されている短歌は、妖しくも不思議な魔力に満ちています。

●忠敬(ただたか)の測量のごと正確に君との距離をかんじていたり
●「ゆるす」というたった3文字のパスワード忘れていたね 朝焼けの窓
●見渡せばレアポケモンもなかりけり 裏の母屋に婆さんひとり
●座敷童子にぶどう味のグミ食わせれば吐き出しており畳の上に
●なつかしい悪夢食べ終えススキ揺れるレストラン跡に立ちつくすわれ
●行方不明の風船男の風船の中に江戸川乱歩一冊
●悪相のヤンキーの視線逸らしつつ深夜デニーズで食むハンバーグ
●どや顔の川田部長の説教にときどき混じる松下語録
●キャバ嬢からの電話を切りぬ 火渡りを終えきし行者の清しさを以て
●草食男子の精子のごとく僅かなり百円ショップの修正液は
●前世より来世が近い歳となり本醸造をホッピーで割る
●古書店に『脳内革命』積まれおり革命未遂者の指紋のこして
●宇宙人を匿っている農家から夜ごと放たれる青い電磁波
●第二回四次元美人コンテスト準優勝という兄の元カノ
●五月闇に「ムー」を小脇に立ち尽くす。これでよかったのか俺の人生
●目つむれば鑑真のいびき聞こえ来る唐招提寺の桜の下に
●校廊で耳を澄ませば聞こえくる復員兵の義足の足音
●絨毯に脛毛散らして語り合う「童貞連盟」結成パーティー
●バレンタイン廃止を叫ぶ男らのカバンに冷える母の義理チョコ
●生・老・病・死 そしてもひとつ童貞も苦に加えよと兄がのたまう
●さくらさん逝きてピーヒャラピーヒャラと平成最後の夏が終わりぬ
●咳すれば人波左右に割れてゆきモーゼのように歩みゆくわれ
●テレワーク意外といける画面隅に子供や猫がよこぎるもよし
●夕焼けの鎌倉走る サイドミラーに映る落ち武者見ないふりして

面妖なこういう短歌湧き出づる笹の脳味噌独りほじくる――榎戸誠。