榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

「21世紀版都市型隠居」を25歳から実行している著者のゆる~い日常と考え方・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2010)】

【amazon 『思い立ったら隠居』 カスタマーレビュー 2020年10月15日】 情熱的読書人間のないしょ話(2010)

ジョウビタキの雌(写真1、2)、混群のエナガ(写真3、4)とシジュウカラ(写真5、6)、ヒヨドリ(写真7、8)をカメラに収めました。

閑話休題、エッセイ集『思い立ったら隠居――週休5日の快適生活』(大原扁理著、ちくま文庫)では、「21世紀版都市型隠居」を25歳から実行している著者の日常と考え方が、ゆる~く綴られています。「私は東京郊外の小さなアパートで地味にひっそりと隠居暮らしをしています」と始まります。

著者の「21世紀版都市型隠居」は、このように説明されています。「●郊外の小さな安アパートを借り、●週に2日だけ働き、●人に迷惑をかけず、●友人は厳選した人が少しおり、●携帯は持たず、●テレビも持たず、●社交をせず、●たまには都会に出ていって贅沢もするが、●基本的に欲はなく、●こだわらない。●ただひとつだけ、現代社会と距離を置くことに、貪欲にこだわる。●そして自分の生活をこよなく愛し、楽しんでいる。こんな感じです。ザ・人畜無害!」。

「いちばん大切なのは、一人ひとりがそれぞれに合った方法でハッピーに生きること、それだけです。そのために目標や向上心が必要ならば利用すればいいし、そうでなかったら夢なんかなくたって、成長しなくたっていいじゃん。そう思ってこの本を書いたし、その気持ちは今も変わらない。何もしなくてもじゅうぶん楽しいという人間のプレゼンスが、ぬるい毒のように社会の端から染み渡っていったら、こんなにサイコーなことはありません」。

1ヶ月の生活費は7万円台、そして、お金のかからない、かつひとりでも没頭できる、著者の趣味は読書と映画鑑賞です。

「そこで思い出すのが『イノベーター理論』。これは、新しい技術やサービスが出てきたときに、それがどんなふうに市場に普及していくかを表す理論です」。イノベーター(革新者)、アーリーアダプター(前期採用層)、アーリーマジョリティ(前期追随層)、レイトマジョリティ(後期追随者)。ラガード(遅滞層)の5つに分けられています。「そして実は最後の最後に、シノダー(篠田桃紅さん・106歳)という層があることは誰にも知られていません。なぜなら私がいま捏造したからです。芸術家の篠田桃紅さんは著書のなかで、『もう世間が私に向けて商売しようと思わないのよ』ということをおっしゃってました。なぜなら106歳だから。めっちゃラクじゃないですか。市場に普及も何も、はじめからマーケットにされてない層があるなんて! 私の今後の人生における方向性が見えました。目指すはシノダーです。私はこの文庫版を書いている現在、34歳なので、あと72年がんばります!」。

「健康でいることが、長い目で見れば一番の節約になると思っています。目先の安さに惑わされて悪いものを食べ続けて、結果病気になってしまったら、節約もあったものじゃありません。そのときにかかるお金と時間と体力を考えると、健康でいるためなら、少しくらいの出費は辞さないことにしています」。

「隠居するということは、『お金をかけなくても生きてはいけるようにする方法』を模索する旅でもありました」。

「さて、あんまりお金がかからないなら、それに伴ってがむしゃらに働かなくてもよくなります。ほとんど毎日働いて20万円も稼がなくても、週2日くらい働いて7~8万円もらえれば、とりあえず生きてはいけます。私はというと、現在、重度の身体障がい者介護の仕事を週に2日だけ入れています」。

かつて猛烈サラリーマンであった私とは年齢も時代も環境も異なるのに、この著者に妙に共感を覚えるのは、365日休暇状態の隠居暮らしを送る現在の私と基本的な考え方が似通っているからかもしれません。