榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

聴き上手になろう――鷲田清一が高校生に対して行った講演録・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2440)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年12月22日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2440)

ジョウビタキの雌(写真1、2)、ハクセキレイ(写真3)、ヒヨドリ(写真4)、アオサギ(写真5)をカメラに収めました。

閑話休題、『だんまり、つぶやき、語らい――じぶんをひらくことば』(鷲田清一著、講談社)は、鷲田清一が高校生に対して行った講演録です。

「相手の話を聴くというのはとにかくむずかしい。すぐ否定したくなったり、じぶんはこう思うと反対の主張をしたくなったりする。・・・河合(隼雄)先生はこうおっしゃいました。『ひとつ、ええ手があるよ、ひとの話聴くのに。なにかというたら、ほうと言うことや。ひとがしゃべっている。そこで、えっ、ほう、ほ―う、って言うたら、もっと話してくれる』」。これは、試す価値ありですね。

「聴くというのは、相手がじぶんで語り尽くすまで待つということなんです。いいかえると、聴くというのは、つまるところ、『時間をあげる』ということなんです。これはことばでいえば簡単ですが、じつはものすごくしんどいことです。相手はけっしてすらすら語ってくれないし、ときに長く黙りこんでしまうこともある。その沈黙の時間がとてもしんどくて、すぐ『あなたの言いたいのはこういうことじゃないの?』というふうに、ことばを迎えにいく。・・・聴くほうも、揺れる相手の思いをじぶんの理解の枠に収めようとしてはいけない。気が急くというのはだれだってそうだけれども、相手がじぶんで語りきるまでじっと待っていないといけない。それは語らいというのがそれぞれにかけがえのない思いの交換であり、たがいに共通するところを見つけようとするのではなく、それとは正反対の過程、つまり同じ事態に向きあっているのに、このひとはこんなふうに感じるのかというふうに、じぶんと相手のあいだの差異をこそ、深く、そして微細に思い知らされるというできごとだからです」。すぐ、相手の話を要約してしまう癖のある聴き下手な私には、耳の痛いことばかりです。反省頻りです(汗)。

「語らいの相手、それは友だちであっても、街で知り合った人でも、なにかの集会ででもなんでもいい。ただ、心がけとして、できるだけじぶんと同じコンテクストのなかで生きていないひと、生きてきた環境ができるだけ離れているひと、さらに言えば、じぶんでどんどん関係のコンテクストをつくっていける、ひらいていけるようなひと、そういうひとと話すよう、出会えるよう、心がけてほしいということです」。このことは、私はできていると自負しています。