生活に根差した官能的な短歌を詠む女・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2055)】
アンスリウム・アンドレアナム(写真1)の赤い仏炎苞と黄色い花が目を惹きます。シャコバサボテン(クリスマス・カクタス。写真2、3))、オオカッコウアザミ(写真4)が花を咲かせています。観葉植物のフィロデンドロン・セローム(写真5)、パキラ(写真6)をカメラに収めました。
閑話休題、『辰巳泰子集』(辰巳泰子著、邑書林)で初めて、辰巳泰子の短歌に出会いました。こういう生活に根差した官能的な歌を詠む歌人の存在に、これまで気づかなかった自分の迂闊さを恥じ入っています。
●午後。唇(くち)といふうすき粘膜にてやはく他人の顔とつながる
●一匹の夏蝶われの胃の腑より立ち昇らせて恋のはじまり
●蒼醒めし肉のにほひを放ちをる脱ぎ捨てられし壁ぎはのシャツ
●奇妙なる嗜好のをとこなりしがとおもふ浴みする身を映すとき
●ひと夜さをうごめきやまぬ恋といふ潰しそこねの羽虫一匹
●知らず知らずに計りつつをり一回のくちづけで得るしあはせの量
●リクルートスーツ脱げばあらはるる男尊女卑に怒るふともも
●秋天(あきぞら)に告げたきことのあるらしく内腑ぎしぎし立ちあがりたり
●さむざむと陰を洗へるしまひ湯の底のくらみを見つめながらに
●「言ひたいだけを言へ」と呟く言ひ切つたなら許さぬといふ顔をしながら
●石をもて葬らるるてふ姦婦のむかしの男女(めを)の快楽(けらく)はふかき
●こぼしたる朝のミルクを舐めながらふいに始まる生理もあらむ
●うすらなる闇の粒子を吸ひよせて男の裸身ぬらりと佇てる
●しやぶり尽くさば一本の骨となりゆかむ愛のごときを繰り返しゐる
●濃紺の浴衣のうちにゆすられて乳房ふたつ笑へるごとし
●割りたしとおもふのみにてかたはらのふかき眠りに動かぬ頭骨
●むざんやな畳のうへの陰の毛にからめ取られし羽虫一匹
●箸もつたままにテレヴィに釘づけの髭濃きことも似てゐるをとこ
●罵りのはてを抱けと横たはる夜叉のやうなるわれを見らるる
●責めらるるうれしさ夢におぼろげに前(さき)のをとこの名を呼べと言ふ
●居直りて別れしひとを居直らすまで追ひ詰めしわれでありしか
●あはれあはれ骨盤のなかの闘ひぞ白血球もおそらくをんな
●地表にてわれは小鼻をふくらませ腋臭のひとのシャツを洗へる
●性欲の捨て場所として伴侶あり 誰か抱かれてゐる千の窓
●一月ばかり黙しゐしことは重大事 責めるなといふ背中で夫は
●銀舎利に大根おろしかけて喰ふ訣れた人とゆく遠い街
●舞台終はりまひるの谷に伏すゆめは顔なき男にフェラチオをする