エビデンス(科学的根拠)を理解するのに最適な一冊・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2216)】
さまざまな色合いのバラが咲き競っています。因みに、本日の歩数は11,405でした。
閑話休題、『「エビデンス(科学的根拠)」の落とし穴――「健康にいい」情報にはランクがあった!』(松村むつみ著、青春新書)のおかげで、エビデンス(科学的根拠)をより深く理解することができました。
エビデンスは絶対の真実ではないと書かれています。「医師は『エビデンス』をもとに病気について診断し、治療を施します。『エビデンス』は、研究にもとづいた事実であり、日々、新しいものが生まれています。十分な根拠にもとづいた新しい事実が生まれてくると、診断法や治療法が更新され、変わっていきます。実際に、今ある病気で、20年前と同じ治療法を行っている病気は少なくなっています。医学の進歩とともに、適切な診断法、治療法が変わっていくのはよくあることです。つまり、『エビデンス』は絶対的真実ではなく、医学の進歩とともに日々更新され、変わっていくものなのです」。
エビデンスにはランクがあるという指摘は、勉強になりました。
●エビデンスレベル6=専門家の意見
●エビデンスレベル5=症例報告
●エビデンスレベル4=症例対照研究、コホート研究
●エビデンスレベル3=非ランダム化比較試験
●エビデンスレベル2=ランダム化比較試験
「患者さんを対象とした研究のやり方の中で、もっとも信頼性が高いと考えられているのが、『ランダム化比較試験』です。たとえば、新しい薬の効果を確かめる際に、参加する患者さんを2つのグループに分け、一方のグループには新しい薬を投与し、もう一方のグループには、ニセの薬(人体に害のないもの)を投与します。どの患者さんをどちらのグループに割り振るかは、ランダムに決められ、人間の判断が一切入らないようにするのが『ランダム化比較試験』(レベル2)で、ランダム化の手法を採り入れないのが『非ランダム化比較試験』(レベル3)になりなす。ランダム化比較試験で、研究に参加している患者さんがどちらに割り振られたかわからないようにし、また、薬を投与する医師の側も、自分が投与しているのが新しい薬なのかどうかわからなくする、というやり方が『二重盲検法』で、さらに信頼性は高くなります」。
●エビデンスレベル1=システマティックレビュー、メタアナリシス
「これは簡単に言うと、『複数の研究を統合して、結果を出したもの』ということになります」。
私が長年勤務した三共(現・第一三共)では、二重盲検法による研究成績しか医師、薬剤師に説明しませんでした。
ワクチン接種に対する著者の見解が示されています。「わたしは、予防接種で病気を予防できるメリットは、確率の低い副反応にはるかに勝ると考えています。ですので、麻疹も子宮頸がんも、ぜひ怖がらずに予防接種をしていただきたいと個人的には思っています。インフルエンザの予防接種に関しては、期待できる効果は発熱期間が短くなるなどマイルドですが、小さなお子さんと高齢者はとくに、メリットのほうが大きいと考えます」。
糖質制限については、こう述べています。「糖質制限には、短期的にはかなり多くのエビデンスがあります。しかし、『多くのエビデンスがあるから正しい』と言えるものではありません。『やせる』『短期的に、心筋梗塞のリスク因子を改善するようだ』ということは、いくつかの研究で証明されています。ただし、もっとも大切なのは、『長期間にわたって、死亡率を改善するのかどうか』ということです。糖質制限においては、『長期にわたる研究』が絶対的に少ないのです。『メタアナリシス』もいくつかありますが、1年程度の研究も多く、何十年にわたって検証されたものはほとんどありません。最終的な結論を出すには、もう少し時間が必要でしょう。・・・25年間にわたるハーバード大学の(炭水化物の摂取が多すぎても少なすぎても死亡リスクが高いという結果が出た)研究とも一致する考えです。糖質制限をするにしても、あまり極端ではなく、ゆるやかな形でされるのがいいと思います」。