大阪大学医学系のゼミで、科学的思考法を身につけよう・・・【MRのための読書論(186)】
仲野ゼミに参加しよう
1000円足らずを払えば、大阪大学医学系教授のゼミ「健康と医学について考えよう」に出席できるとは、何という幸運だろう。その上、生きぬくための科学的思考法が身につくというのだから、言うことなし。
『考える、書く、伝える 生きぬくための科学的思考法』(仲野徹著、講談社+α新書)を読むと、第1回~第10回の授業を臨場感豊かに体験することができる。さまざまな学部から集まった新入生14名に交じって授業を受けることにしよう。
著者が、これまでに大きな影響を受けた本が挙げられている。
●『知的生産の技術』(梅棹忠夫著、岩波新書)
●『思考の整理学』(外山滋比古著、ちくま文庫)
●『発想法 創造性開発のために』(川喜田二郎著、中公新書)
●『理科系の作文技術』(木下是雄著、中公新書)
私も、この4冊から学ぶことが多かった。
プレゼンと論文に必須の3つのノウハウ
●科学的な考え方――
「科学というのは、単称言明(観察・実験)に基づいて帰納的に考え、普遍言明(仮説・法則)を導き出す行為だということです。ただし、普遍言明といっても、100パーセント正しいとは限らない。反証が出されたら覆される、ということをしっかり頭に入れておいてください」。具体的には、①正確なデータに基づいて考える、②「健全な」好奇心を持って疑う、③できるだけ単純に考える、④合理的に考える、⑤慎重かつ大胆に考える、⑥同じ興味を持っている人と話し合う。
●論文の書き方――
「レポートは単なる報告であるのに対して、論文のほうは、意見を述べて説明するとあるように、意見を述べることが大切なのです」。具体的には、①題名=まずは目を引くことが肝心、②要約=簡潔かつおもしろく、③序論=読み手に予備知識を与える、④結果=正しいデータとファクトが最重要、⑤考察=説得力が重要、KJ法を使いこなす、⑥方法=信頼度のあるデータのとり方。
「将来、どのような職業につくにしても、論文とまではいかなくとも、論理的な文章を書く能力は絶対に必要です。・・・文章を書くといっても、自分しか読まないような日記ではダメで、他の人が読んでわかる文章を書きなさい、論文とまではいかなくとも、論理の通っている文章を書く必要がある。いちばんいいのは、誰も読まないかもしれないけれど、ブログにアップすることです。他人に見られるという緊張感を持って書けば、書きぶりがかなり違ってくるはずです」。私は、毎日、ブログに書評を掲載しているが、継続は力と実感している。
「最初の原稿執筆に費やす時間と、推敲にかける時間は同じくらい、あるいは後者のほうが長いくらいです。・・・(ヴィネイ・クマー先生に)講演していただいたときに言われた言葉が、『There is no good writing, only good rewriting.』でした。『いい執筆などというものはない。いい推敲があるだけだ』とでも訳せばいいのでしょうか」。私も、推敲には執筆より多くの時間をかけている。
●プレゼンテーションのやり方――
「北村幸彦先生の教えが頭にこびりついています。自分では自分の研究がおもしろくてたまらないかもしれないけれど、ほとんどの他人にとってはどうでもいいことなので、プレゼンを聞いたところで何も覚えてもらえないのがふつうと考えるべきである。だから、シンプルにプレゼンをして、大事なことを最低3回はくり返すこと。なるほど確かにそうだと思いますし、ずっとこの教えにしたがってやってきました」。
大学時代に身につけるべきものは、知識よりも学び方である。なかでも最も重要なのは、読書の習慣と本を読みこなす能力である――という著者の思いが、本書の隅々にまで行き渡っている。
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