「結婚・持ち家・子どもの教育」が不可能な若者が増えている・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2291)】
我が家の真上で鳥がピーピー鳴いているわよ、と庭から女房が呼ぶので、慌てて駆けつけました。聞き慣れない鳴き声の主は、カワラヒワの幼鳥(写真1~3)でした。獲物を銜えているハシブトガラスの隣で、盛んに鳴き声を上げて餌をねだるハシボソガラス(写真4、5)という、珍しい場面を目撃しました。吸水するアオスジアゲハ(写真6~8)、ショウジョウトンボ(写真9)、ガマの穂(写真10)をカメラに収めました。オクラ(写真11、12)、白いアガパンサス(写真13、14)が咲いています。
閑話休題、『アンダークラス化する若者たち――生活保障をどう立て直すか』(宮本みち子・佐藤洋作・宮本太郎編著、明石書店)は、アンダークラス化する若者たちを救うにはどうしたらよいかがテーマの論文集です。
「新型コロナ禍に至る『失われた20年』で、働いても働いても暮らしが成り立たない人々が増加する社会となり、学校時代を経て実社会に出る若者たちのなかには、『暮らしが成り立つ』という観念さえもてない若者が増えていたが、新型コロナ禍はその趨勢を決定的にしてしまうのではないかと危惧する。これらの若者と、これから若者期に入る人々のなかに、それまでの時代に確立した『結婚、持ち家、子どもの教育』がセットになった標準生活(中流生活)を営むことができない人々が増加していくだろう。貧困家庭で育つ子どもたちへの対策がようやく進み始めた頃、不幸にも新型コロナウイルスに見舞われたとは何とも不運なことだ。・・・新型コロナウイルスの影響で、若い世代の就職難、所得低下が始まっているのを見ると、これ以後、出生率が上昇する要因は残念ながら見つからない。日本の低出生率の最大の原因は晩婚化と非婚化、とくに非婚化の影響が大きい。家庭をもつことが、若者の選択肢から消えてしまいつつある」。
「私たち研究チームは、欧州のいくつかの工業国の若者と日本の若者の比較研究をしてきた。欧州の場合、スタート時点で非正規雇用であっても、何年か後には正規雇用に転じている。しかも日本と違うのは、たとえ非正規雇用であっても、親の家を出て独立の生計を立て、そのうちには子どもをもっている若者世代の率が高いことだ。それは、所得保障、失業、家族関連、住宅関連などの社会保障費がどのような若者にも適応されるからで、賃金の不十分さを社会保障費が補償しているのだ。日本はどうか。非正規雇用の若者の大半は親元で暮らしている。親の家を出て一人暮らしをしたり、結婚したり子どもを持つことと無縁のままだ。なぜなら、若者に対する社会保障が弱体で、生計を立てる手段はもっぱら賃金に置かれ、それが少なくてもそのまま放置されるからだ。若者は生活に困ったら親元にいれば大丈夫だと考えられている。やむなく不安定な仕事を続けている若者たちは、生計を立てられるようになる見通しが立たないまま絶望の淵に立たされている」。
「2015年の刊行以後、研究と支援活動を通して肌で感じたのは、アンダークラス(下層階級)ともいうべき若者たちが増加しているのではないかという問題意識だった。将来の見通しがもてないまま労働市場の底辺をワーキングプアとしてさまよう若者や、社会に出ることもできないでひきこもる若者など、多様な形で若年アンダークラスは存在している。同時期に、貧困状態にある子どもがようやく社会問題として認識され取り組みが始まったが、若年アンダークラスの増加は、子どもの貧困化と機を一にしている」。
「親の援助がなくとも若者が安定した生活基盤を築くことができるような社会保障制度の強化を図らなければ、将来的に貧困に陥る中高年人口が今よりもっと拡大するだろう」。
若者の悲惨な実態について、考えさせられる一冊です。