生存に有利さをもたらした進化が、今や、人類を悩ませる問題の要因となっている――では、どうすればいいのか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2409)】
【読書クラブ 本好きですか? 2021年11月21日号】
情熱的読書人間のないしょ話(2409)
さまざまな色合いのサザンカが咲いています。
閑話休題、『目的に合わない進化――進化と心身のミスマッチはなぜ起きる(下)』(アダム・ハート著、柴田譲治訳、原書房)の主張は、明快です。
生存に有利さをもたらした進化が、今や、人類を悩ませる問題の要因となっているというのです。
「過去10年の間に、わたしたちの知り合いは数十人から何千人にもなり、わたしたちの脳はこうしたアップグレードに対応できていない。わたしたち人間は異常に暴力的な哺乳類の一群から進化したのだが、確かにわたしたちは原始的な暴力で支配された社会を築き上げる進化的傾向性によって人類の遺産の大部分を生み出してきた。嗜癖は、それ自体が暴力の原因となるが、それは現代世界の影響により脳の報酬系がハイジャックされた結果で、もともとは生存のために進化したものだが、今ではわたしたちを目眩のするような危険な快楽へと向かわせている。社会的動物として、人間は集団で行動するように進化し、他人を信頼し協力するようになったが、社会の進化によりわたしたちは絶望的なまでにだまされやすくなり、フェイクニュースや誤った信念の餌食となっている。人間が原因となっている多くの環境問題を解決しなければならない切迫した状況にあって、最も心配なのは、利己的に進化してきたわたしたちは、未来について理性的な想像ができなくなっていることだ。要するに、進化的遺産とわたしたちが形成してきた現代の環境との間の不適合によって、わたしたちはたいへん悲しむべき状態にある」。
では、わたしたちは、どうすればいいのでしょうか。こうした状態から脱する手段を発見するには、先ず、どうしてこういう状態になってしまったかを知ることが必要だと、著者は強調しています。