榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

大人が読解力を鍛えるには、どうすればいいのか・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1683)】

【amazon 『大人の読解力を鍛える』 カスタマーレビュー 2019年11月25日】 情熱的読書人間のないしょ話(1683)

メジロ、オナガをカメラに収めました。紅葉が盛りを迎えています。因みに、本日の歩数は12,009でした。

閑話休題、『大人の読解力を鍛える』(齋藤孝著、幻冬舎新書)で、とりわけ強く印象に残ったことが3つあります。

第1は、「読み解けないからすぐキレる――読解力は感情の暴走を抑制するブレーキ」。

「読解力が欠如している人は他者の言葉を曲解しがちで、他者の言葉を曲解しがちな人には、『キレやすい』傾向が見られます。あくまでも『ひとつの例』として持ち出した一般論なのに、それを『自分への批判や非難』だと曲解してキレる。心配してかけてくれた言葉を、嫌みだと曲解してキレる。親切や気遣いをおせっかいだと曲解してキレる。最後まで話を聞かず、話の一端だけで勝手に解釈して激昂する。相手の意図を理解せずに勝手に否定的感情をくっつけて、勝手に怒りに昇華させる。自分の主観だけで勝手に意味を決めつけ、しかもそれが正しいと思い込んで冷静な思考ができなくなる。・・・他者の言葉からその真意を汲み取れる大人の読解力とは、思い込みや曲解によって増幅される人間の内なる攻撃的感情に歯止めをかける「ロジカルなブレーキ』でもあるのです。・・・読解力が高い人に『すぐキレる人』はまずいません。『読解力』という名の、感情の暴走を抑制するブレーキは、円滑なコミュニケーションや良好な人間関係の維持に不可欠な、社会人としての『標準装備』と言えるでしょう」。

第2は、「根拠のない不確かな情報は、必ず『裏を取る』」。

「違和感センサーが反応した疑わしい『推定有罪』の情報は信じない。鵜呑みにして発信しない。これがメディア・リテラシーの基本です。では、そうした不確かな疑わしい情報を前にしたとき、どのようにしてその真偽を見極めればいいのでしょうか。答えはシンプルかつ明快。その情報を、多角的かつ徹底的に調べてみることです。つまり、情報を『裏を取る』のです」。具体的には、「ネット検索は情報の裏を取るための『最初の一手』」、「最低でも3回以上、『超検索力』で徹底的に掘り下げる」、「疑わしい情報は、『活字情報になっているか』をチェック」することを勧めています。

第3は、「論理的な文章は、まず書き手の『好き嫌い』を読み解く」。

「小説や詩歌などを『文学的な文章』とするならば、評論や解説、説明文などは『論理的な文章』に分類されます。・・・評論文などのロジカルな文章は、まず書き手の『感情』を読み取れ――大学の授業で現代文の読解を取り扱うとき、私はいつも学生たちにそう指導しています。人が何かを主張するとき、その手段が文章であれ言葉であれ、その裏には必ずその人の感情が張り付いています。いくら論理性を重視していても、感情は切り離せません。論理とは、感情による価値判断という土台があって初めて構築されるものだからです。・・・理屈や論理よりも先に、まず書き手の根本的な『好き嫌い』の感情を読み取る。私はこのアプローチを、『好き嫌い現代文』と名付けています。私自身も本を読むときは今でも、必ず著者の論理の裏にある『好き嫌い』を常に意識するようにしています」。