榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

女子大生が50歳の大学教授を好きになってしまったら・・・【山椒読書論(612)】

【読書クラブ 本好きですか? 2021年11月25日号】 山椒読書論(612)

コミックス『人間交差点(7)――蜃気楼』(矢島正雄作、弘兼憲史画、小学館)に収められている「面影花」は、50歳の大学教授と女子大生の物語である。

「どうしてこんな気持ちになったんだろう。今まで、異性を好きになったことなんて一度もなかったのに・・・。いや、男はおろか、どんな人間に対しても好意を持つことなんか一度もなかったのに・・・。西北大学、英文学教授、鈴木章一、50歳・・・あなたが私の心を完全に奪ってしまった初めての人間よ・・・」。

この女子大生・富田みち子は、愛人バンクみたいな組織を作って荒稼ぎをしている。

「鈴木先生だけは、こんな嫌われ者の私でも受け入れてくれそうな・・・」。

みち子は、一人暮らしの鈴木の自宅に押しかけ、抱いて欲しいと訴えるという思い切った手に出るが、鈴木が呼んだ警官に連れ出されてしまう。そして、警察署の調室で刑事から思いがけないことを聞かされる。みち子の愛人バンクが売春防止法6条違反の疑いがあることだけでなく、「おまえのおかげで、鈴木教授のたった一人の愛娘・鈴木恵美は、自殺をするはめになったんだからな」。上級生のみち子の策略に陥り愛人バンクに登録させられた大学1年生の恵美は、思わぬ妊娠を苦にして自殺してしまったというのだ。

さらに、女性警官が鈴木の気持ちをみち子に伝える。「鈴木教授は目に涙を浮かべながら、こう言ってたわよ」。「もちろん、本人の意志の弱さも、私自身の教育上の責任もある。でもね、親としては、やはり口惜しいものです。私の娘を自殺に追い込んだ富田みち子の名前は、私の授業に登録してきた時から気付いていました。忘れようにも忘れられない名前だ」。

接見室で、みち子に鈴木は何と言ったか!