結婚生活について考えさせられる作品・・・【山椒読書論(619)】
【読書クラブ 本好きですか? 2021年12月2日号】
山椒読書論(619)
コミックス『人間交差点(14)――過去を持つ愛情』(矢島正雄作、弘兼憲史画、小学館)に収められている「昼に近い午後」は、結婚生活について考えさせられる作品である。
OLの和子は、同棲相手の学生・典夫が就職しようとしないので見切りをつけ、違う男と結婚する。「相手は、私が希望していた条件をほぼクリアーしている男だった・・・ただそれは、結婚半年間だけで、突然、状況が一変してしまった。強引に夫の実家に同居することに同意させられたのだ。義母との暮らしは、思った以上に辛いものだった・・・」。
「これが結婚なのか・・・!!」。「数か月後、私は離婚した」。「離婚した後、私は、再び典夫に会い――二人はアパートでまた一緒に暮らし始めた・・・たった2年だけど夫婦のように暮らした・・・でも、私の精神はあの結婚以来、すでにボロボロになっていたのだ・・・この時、典夫には小学校にあがる女の子がいた。典夫もまた結婚生活に破れていたのだ。私の言動は日増しに常軌を逸していった・・・」。「どうしてこんな生活で満足してるのよ? どうして向上心がないの? いつまでも夢ばっかり追って馬鹿よ!! ちゃんと就職して私を幸福にしてよ!!」。「私は今まで、うまくいかなかったことを、総て典夫のせいにした。理不尽な話よね、人は誰でも幸福になって当たり前だと信じこんでいたから・・・」。「出て行ってくれ、娘のために・・・これ以上、君と一緒に暮らす訳にはいかない」。逆上した和子は典夫を刺殺してしまう。
「あんたのお父さんは死んだ。・・・そして私は、刑務所には行かず、病院へ入った・・・」。和子の後をずっとつけ回す、今は養護院で暮らす典夫の幼い娘と向き合い、和子が知った真実とは・・・。