酒場の喧嘩で殺されてしまった恋人が忘れられない若い女性の物語・・・【山椒読書論(638)】
【読書クラブ 本好きですか? 2021年12月22日号】
山椒読書論(638)
コミックス『人間交差点(19)――雪の手紙』(矢島正雄作、弘兼憲史画、小学館)に収められている「雪の手紙」は、酒場の喧嘩で殺されてしまった恋人が忘れられない、北海道・小樽のガラス工芸店で働く若い女性の物語である。
母が経営するエアロビクス教室を首になった彼は、去っていった。「新潟、長野、盛岡、そして小樽消印・・・あなたから届く雪国の絵ハガキだけが、5年間、私が生きてきた証です」。
「あなたを追い続けるだけの5年間でした。あなたの顔すら忘れかけています。眠れぬ夜、ふと自分が何を作っているのかわからなくなる時さえあります、愛って、なんですか・・・」。
母の言葉。「そうね・・・思い出は死なないものね・・・」。