榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

始皇帝陵の地下深くの地下宮殿には、始皇帝の遺体が今も残されているかもしれない・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2493)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年2月13日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2493)

あちこちで、セイヨウアブラナ(ナノハナ)が咲いています。

閑話休題、『始皇帝の地下宮殿――隠された埋蔵品の真相』(鶴間和幸著、山川出版社)によって、始皇帝陵の研究は今や新たなステージに突入していることを知りました。

「中国史上最初の皇帝となった始皇帝(前259~前210年、在位・前247~前210年)は、最初は秦王として26年間即位し、東方の6国を統一したのちは皇帝として12年間君臨した。秦王に即位した翌年から陵墓の建設がはじまり、37年の治世の間、罪人72万人を動員して建設工事を続けたという。50歳で病で急死した始皇帝の遺体が収められたのは、現在も残る東西345メートル、南北350メートルの巨大な墳丘の地下であり、地下深くに墓室を作って土で埋めてしまったために、そこに立ち入ることはできず、入るためには墓室の上部の膨大な量の土を取り除かなければならない。将来の発掘を待たなければならないのである」。

本書は、始皇帝陵の地下宮殿の実態を解明することを目的としています。

「1974年、始皇帝陵の東で兵馬俑坑が発見され、それ以降、始皇帝陵が墳丘の周辺の陪葬坑、陪葬墓と一体であることが認識されるようになった。・・・未発掘の地下宮殿の様子は、陵園全体との関係からとらえることができる材料が整ってきた。・・・(袁伸一氏は)地宮の排水設備、埋蔵物、天文と地理の画像、水銀、棺椁,金縷玉衣、盗掘など多彩に論じている。・・・始皇帝の遺体がいまでも残されているかもしれない。・・・残された始皇帝の地下宮殿にこそ大量の行政文書や書籍類が収まっている期待が高まってきた」。

驚くべきことが記されています。「始皇帝の末子の胡亥が二世皇帝として即位したことで、始皇帝の12人の公子は咸陽の市場で死刑となり、10人の公主(皇女)も杜県で身体が引き裂かれる死刑に処せられた。・・・かれらは趙高と二世皇帝胡亥によって処刑され、身体は頭部、胴体、手足の部分が分離されて埋葬された。・・・公子たちの罪は、父始皇帝ではなく兄弟の二世皇帝へ臣として従わなかったことであり、死罪に相当するという」。

著者は、始皇帝は等身大の地下の世界を作り、始皇帝自身の生の世界を永遠に長らえさせようとしたと推考しています。2016年1月に東京・上野の東京国立博物館で開催された特別展「始皇帝と大兵馬俑」で間近に見た兵馬俑の実物大の兵士たちは、まるで生きていて始皇帝を守っているかのようでした。