榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

科学分野の書評集には、驚かされることばかり・・・【情熱的読書人間のないしょ話(1384)】

【amazon 『世界を知る101冊』 カスタマーレビュー 2019年2月2日】 情熱的読書人間のないしょ話(1384)

東京・杉並の阿佐谷~高円寺を巡る散歩会に参加しました。馬橋稲荷神社、阿佐ヶ谷神明宮、猿田彦神社、阿佐ヶ谷弁財天、馬橋庚申堂を訪れました。道幅の狭い暗渠は風情があります。因みに、本日の歩数は16,759でした。

閑話休題、『世界を知る101冊――科学から何が見えるか』(海部宣男著、岩波書店)は、科学分野の書評集です。

『縄文論争』(藤尾慎一郎著)の書評には、こういう一節があります。「気鋭の縄文研究者である著者は、縄文人や縄文文化への理解の視点を現在進行形で整理しながら、これまでの見解の移り変わりを見直し、研究の到達点と今後を探る。多くの研究を紹介し、それへの批判的研究にもきっちり触れる。はっきり結論が出せないことについては、そのようにあっさり言明する。わからないから、その謎への挑戦があるのだ。学問とはそういうもの。その上で著者の見解を、わからなければわからないと明快に示す姿勢が心地よい。・・・最近の研究は、縄文文化を『氷期が終わり温暖化する環境への東アジア型適応』という形で一般化し、世界的人類史の中でとらえつつあるようだ。縄文が、世界とつながった」。

『もうひとつの視覚――「見えない視覚」はどのように発見されたか』(メルヴィン・グッデイル、デイヴィッド・ミルナー著、鈴木光太郎・工藤信雄訳)には、驚くべきことが記されています。「(実験・研究の結果)人間の視覚には2種類あることが、はっきりしてきた。『2つの視覚』の一方は、形や大きさ、色などの視覚情報を組み立て、記憶と照合して知覚として整理し、記憶する。すなわち、あれはドア、これはコーヒーカップという、視覚情報の意識化を行う。もちろん人の顔の認識も含まれる。本書では『知覚システム』と呼ばれる。もう一方は『視覚運動システム』で、視覚情報に基づいてリアルタイムで身体の動きを制御する。機械の制御システムのようなものだ。行動後の視覚データは、速やかに(1秒以内に)失われる。そうしなければ、次の運動ができないからだ。重要なことに、この制御運動はコーヒーカップを取り上げるときも、『これはコーヒーカップ』という認識を必要としない! さらにこの2つのシステムは、網膜と大脳皮質を結ぶ別々の経路に物理的に対応していることが。証明された。『2つの視覚』は、脳の中に実在する、互いに独立な視覚システムだった! ヒトは進化の過程で、まず原初的な『視覚運動システム』を磨き上げる一方、大脳皮質と結んで優れた視覚情報をフルに利用する『知覚システム』の機能を、新たに・重層的に構築してきたらしい。今、私たちは、この2つの視覚を気付かずに併用して暮らしている。知的な解釈をする視覚と、無意識的に行動させる視覚。そのコンビネーションが、人間らしい行動を生み出しているのである」。

『性転換する魚たち――サンゴ礁の海から』(桑村哲生著)の書評では、興味深い事例が紹介されています。「性転換にかかるコストとその結果期待される子孫数の増加との天秤で、物事は決まっているらしい。身体上の性差が小さい魚では、一夫多妻のハーレムでオスがいなくなると、体長の一番大きなメスがオスになる場合が多い。大きなオスはメスを独占してハーレムを作れるから、子孫をたくさん残せるのだ。著者はサンゴ礁の魚の性転換に大いにこだわりつづけ、『逆方向の性転換』を発見した。そのくだり、ダルマハゼの実験報告もドラマチックである。オスのほうが小さいオス・メスのペアを一緒にしておくと、なんとオス・メスが逆転してしまう。それもまず求愛行動が逆転し、それに続いて生殖器官の変化が顕在化するのだそうで、進化という生命の推進プロセスは、まったくスゴイものである」。本当に凄いですね!

本書のせいで、読みたい本が増えてしまいました。