孤独と恐れを抱いて生きている人に勇気を与えてくれる本・・・【山椒読書論(667)】
『私たち、まだ人生を1回も生き切っていないのに』(小林エリコ著、幻冬舎)の著者自身の体験談は、孤独と恐れを抱いて生きている人に勇気を与えてくれるだろう。
「当たり前だけど、人は死ぬ。死ぬことはどんな人間も逃れられないことだ。・・・私をいじめた人もいじめなかった人も、いつかはこの世からいなくなる。そして、私もいつか死ぬ。私は何度も自殺を試みてきて、死ねずにこの世に舞い戻ってきた。自殺を試みた時は、死ぬことに躊躇なんてなかった。けれど、生き延びてからはずいぶん良い人に恵まれたと思う。もし、私の自殺が成功していたら、この世界に私を愛して受け入れてくれる人が存在することを知らないままだっただろう。私は神様や運命を信じていないけれど、もし、そういった力が存在するとしたら、残された私の命は神様からの贈り物といっていい。・・・私はずっと世界は平等ではないと信じていた。しかし、もしかしたら、そうではないのかもしれない。お金も地位もない私だけれど、信じる人や愛する人ができた。・・・これから先の人生も絶望や裏切りが待ち構えているだろう。けれど、その横に何か素敵な贈り物がそっと置かれているのを私は知っている。そのプレゼントのリボンを解くまで、まだ私は死ねない」。
「どんな人間だって、一人で生きるのは辛い。クラスで下を向いて、周りのことなんて気にしないように強がっている子も心の中では泣いている。存在するのが辛い場所からは早く逃げるのがいい。それが無理だとしたら、少し我慢して時間が経つのを待つといい。そのうちに周りの環境が変わり、いつの間にか違う場所に立っているというのはよくあることだ。私も辛くて仕方ない時は時が経つのをただひたすら待っていた」。
「私の好きな言葉に『無常』という言葉がある。川の流れには一つとして同じ瞬間はない。常に動き、姿を変えている。私たちの人生も進んでいないように思えても、実際は次々と姿を変えて進んでいるのだ。そして、足元の世界はどんどん広がっている。生き続けることで、新しい人と出会うことができ、新しい喜びが生まれる。そして、気が合う人との出会いはそれだけで生きる勇気になる」。
「私は今、死なないで良かったと感じることが増えた。新しい友達、新しい仕事。新しい街。目の前に置かれた数ヶ月分の処方薬を口に放り込んでいる私には未来が見えなかった。あの頃の私に教えてあげたい。今を乗り切れば素晴らしい未来と出会いが待っているということを」。