世田谷一家殺害事件の犯人像とは・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2563)】
雨に打たれながら、ドイツスズラン(写真1)、アマドコロ(写真2)、オオデマリ(写真3)、コデマリ(写真4)、フジ(写真5)が咲いています。撮影助手(女房)が、今年もヤモちゃんがお出ましよ、と声を上げました。定位置であるキッチンの曇りガラスにニホンヤモリ(写真6)が張り付いています。
閑話休題、対談集『誉田哲也が訊く!――警察監修プロフェッショナルの横顔』(誉田哲也・チーム五社(五社プロダクション)著、光文社)では、興味深いことが語られています。
●世田谷一家殺害事件の犯人像に迫る!?
「既存の情報をちゃんと使えていれば、もう少し違った結果が得られていたかもしれません。たとえば犯人の遺留品にヒップバッグがあったでしょ。あれの中から、モナザイトという鉱物が見つかっているんです。1億4千万年前の放射性物質で、要は砂ですよ。しかもアメリカ・ネバダ州のもの。ちょっと目線を変えれば、違うルートの可能性が見えてくる。たとえばビーチバレーの大会とかね。ビーチバレーの国際大会に出る代表チームというのは、次の開催地から砂を取り寄せて、同じ環境を用意して練習するんです。つまりアメリカの砂が運び込まれる理由がありますよね、あるいは、ゴルフ場のバンカーもそう。バンカーというのは、そのゴルフ場を設計した人の国の砂を持ってきて造成することがあるらしいんですよ。ここにもひとつ可能性があるわけです。海運会社のサイトをつぶさにチェックしてみれば、どこの国の砂を運んでいるかという情報だって載っていますからね」。
「あくまで可能性の話としてなら、もう少し具体的に(犯人像を)掘り下げていくころはできますよね。たとえば、横浜市の青葉区には某テレビ局のスタジオがあって、ゴルフ場が併設されています。そして、青葉区には劇団四季の施設もあります」。「そうか。犯人は犯行後、パソコンで劇団四季のサイトにアクセスしているという情報もありましたね。俄然、この地域が怪しく見えてきます」。「推理の一例にすぎませんけどね。あるいはネット上の書き込みだって、無視できない情報がたくさんありますよ。被害者の男性が、出身大学の演劇クラブで脚本家をやっていて、事件発生のおよそ2カ月前にそのクラブの集まりがあった、とか。こういうのは警察も把握していなかったことです。遺留品の中に香水ってあるでしょ? だったら考え方としては、事件発生後に香水を変えた人を探すというやり方もあり得たわけです。僕だったら、徹底的に理髪店をあたります。彼らは一人ひとりのお客さんの匂いに、30分から小1時間ほど接しているわけですから。同じ香水を嗅いでもらったら、ピンとくる人がいるかもしれない」。
●半グレ集団と暴力団の意外な関係
「面白いのは、半グレ集団をヤクザが使っているケースとは逆に、彼らがヤクザを利用しているケースというのもあることです」。「つまり半グレのほうが、立場が上ということですか?」。「そうです。なにしろ資金力がありますから。彼らは金のない組に取り入って、そこの組員を出し子や受け子として使ったりもするんですよ」。「なぜそんな逆転現象が起こっているのでしょうか?」。「やはり暴対法(暴力団対策法)ですよね。ヤクザが表立って動きにくくなったので、そういう半グレ連中を使い出したところ、次第に力をつけたということなのでしょう」。「でもそれ、ヤクザの側からすると面白くないですよね」。「そうですね。実際、半グレ集団を潰そうと動いた組もありましたよ」。「ちなみに半グレ集団の強みというのは、暴力団のように国の指定を受けないところにあるのでしょうか?」。「いえ。警察では今、そうした治安を脅かす新たな反社会勢力を準暴力団と位置づけて、取締りの強化をしていますよ」。
●受刑者の性自認問題
「受刑者の性自認の問題も気になります。いわゆるLGBTQに相当する人はどう対処しているのでしょう」。「これは昔から難しい問題なんですよ。手術をして正式に性別を変えている人もいますから、刑務所としてはその時点の戸籍上の性別で扱うことを原則としています。いくら本人が『私は女性です』と言っても、戸籍が男性なら男子刑務所に入れますし、逆もまた然りです。ただ、やっぱりトラブルの元にはなりがちなんですよ。女性を自認している人が男子刑務所に入ると、いじめなどの標的になりやすいですし、もし体は男性なのに性自認が女性という受刑者が女子刑務所にやってきたら、それもやはり処遇には気を使うと思います。見た目や戸籍によって、本人の性自認とは異なる性別で扱われることは、その人にとって違和感や生きづらさにつながってしまいますし」。