榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

教授が学生に博士号を取らせるのは、こんなにも大変なことなのか!・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2575)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年5月6日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2575)

コジャノメ(写真1)をカメラに収めました。アメリカハナズオウ‘シルヴァー・クラウド’(写真2)の葉は、淡桃色→白色→中心部が緑色へと変化します。エゴノキ(写真3、4)、タニウツギ(写真5、6)が咲いています。ソメイヨシノ(写真7)の葉の緑色が濃くなっています。因みに、本日の歩数は11,102でした。

閑話休題、『工学部ヒラノ教授と最後の学生たち』(今野浩著、青土社)の著者は、嘘のつけない人のようです。本書は、どうしても博士号を取りたかったヒラノ教授(著者の分身)と、これまたどうしても博士号が欲しかった酒井俊介青年を軸に、独立法人化以前の国立大学工学部の実態を描いているが、ここまで書いてもいいのかと心配になるほど、赤裸々に綴られています。

「当初の計画より一年遅かったとは言うものの、(酒井は)大学院に入学してから五年以内に博士号を取ったのだし、三一歳で博士というのは特別に遅い方ではない。・・・二〇年前であれば、東工大で博士号を取れば、(理工系大学バブルのおかげで)どこかの大学から声がかかった。ところが今や就職状況は一変した。新卒博士の受け皿のほとんどが、任期付きポストになってしまった。三年程度の任期が終わった後、特別に優秀な人だけが、三年程度の任期延長が認められるようになったのである。また九〇年代はじめにスタートした、文部省の大学院重点化政策の影響で、博士課程の学生定員が二倍以上になった。文部省は大学に対して、定員を充足するよう圧力をかけた。充足できない大学には、補助金の減額というペナルティが課された。このため、かつては修士課程を出て民間企業に就職した学生が、教授の客引き運動と大学当局の後押し(奨学金枠の拡大など)で、博士課程に進むようになった。彼らの中には銀未満の学生も含まれていた。文部省はどれだけ多くの博士を育てたかを重視するから、博士論文審査は甘くなりがちである。この結果、博士号を取得しても定職に就くことが出来ない『オーバードクター』が生まれた。大学院からは次々と新卒博士が押し出されるから、オーバードクターは増える一方である。彼らの受け皿になったのは、(三年程度の)任期付きの『渡り鳥』助手や短期研究員、そして非常勤講師ポストである。しかし、これらのポストも数が限られている。また企業は博士を敬遠する。この結果、『高学歴プア』と呼ばれる階層が出現した。ニーズがないことがわかっているにもかかわらず博士を大量生産し、高学歴プアを生み出した文部省と大学の罪は万死に値する」。