はじめての謎の殺人事件の犯人は誰?・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2576)】
ヒルザキツキミソウ(写真1~3)、アカツメクサ(ムラサキツメクサ。写真4)、トキワサンザシ(写真5、6)、レッドロビン(写真7)、ウケザキクンシラン(写真8、9)が咲いています。セイヨウタンポポの種子(綿毛、冠毛。写真10、11)は、よく見ると、幾何学的な美しさを有しています。エナガ(写真12)、ムクドリ(写真13、14)をカメラに収めました。
閑話休題、『人類の歴史をつくった17の大発見――先史時代の名もなき天才たち』(コーディー・キャシディー著、梶山あゆみ訳、河出書房新社)は、先史時代の個人にスポットライトを当てるという大胆な試みに成功しています。
「はじめて火を起こしたのは誰?」、「はじめて衣服を身につけたのは誰?」、「はじめて弓で矢を放ったのは誰?」、「はじめて名画を描いたのは誰?」、「はじめて外科手術を行ったのは誰?」、「はじめて車輪を組みたてたのは誰?」、「はじめて天然痘にかかったのは誰?」など、興味深いものばかりだが、個人的に一番驚いたのは、「はじめての謎の殺人事件の犯人は誰?」です。
1991年9月、オーストリアとイタリアの国境に近いエッツタール・アルプスで、皮膚が凍結乾燥している男性の遺体が発見されました。「エッツィ」という愛称で呼ばれることになる5300年前の人間です。「何より興味深い事実が暴かれたのは、エッツィの発見から10年近くたったときのこと。X線撮影によって、それまで見落とされていたことが明るみに出た。左の鎖骨の下に火打石製の矢じりがめりこんでおり、そのせいで鎖骨下動脈が切断されていたのである。・・・それまでの10年間、エッツィの死因はさまざまに取りざたされていたが、これで議論は決着した。病死でも凍死でも事故死でもない。これは殺人だったのである」。
「では誰がエッツィを殺したのか。その犯人の男を『ジュヴァリ』と呼ぶことにしよう。・・・エッツィの外套に別の人間の血液が付着しているのも確認された。これらの事実(=エッツィの火打石製のナイフの刃先が欠けていたことと、他人の血液付着)はすべて、エッツィが自らの死の1~2日前に誰かを傷つけた、もしくは殺害したことを指ししめしている。もしかしたら『ジュヴァリ』はその犠牲者をよく知っていて、それが山に入るエッツィをつけ狙うだけの強力な(そしていつの世も変わらない)動機になったのではないか」。
「『ジュヴァリ』の狙いは正確だった。矢はエッツィの左肩甲骨を貫き、腕に血液を供給する太い動脈を切断して、鎖骨のすぐ下で止まった。動脈からの失血により、エッツィはものの数分で事切れたと見られる。・・・背中に刺さった矢を無理やり引きぬく。このときに矢じりが矢柄から外れた。・・・矢柄が現場に残っていると身元の割れるおそれがあるために、『ジュヴァリ』がもち去ったのだと(殺人捜査を専門とする)ホルン刑事は推理している」。
今や現代科学のおかげで、先史時代の人間の姿を、これほど具体的に細部まで描き出せるようになっていることを知りました。