榎戸誠の情熱的読書のすすめ -3つの読書論・ことばのオアシス・国語力常識クイズ(一問一答!)-

本書のおかげで、昭和20~30年代、家族が揃って、ちゃぶ台を囲んだ生活を懐かしく思い出すことができました・・・【情熱的読書人間のないしょ話(2755)】

【読書クラブ 本好きですか? 2022年11月1日号】 情熱的読書人間のないしょ話(2755)

トキワロウバイ(キモナンサス・ニテンス。写真1~3)が咲いています。パパイア(写真4、5)が花と実を付けています。トキワサンザシ(写真6,7)、タチバナモドキ(写真8、9)、アキグミ(写真10)、ヤブミョウガ(写真11)、セイヨウヒイラギ(写真12)が実を付けています。クヌギ(写真13)の実が落ちています。女房も私も、固くて歯応えのあるジロウガキ(次郎柿。写真14)が大好きです。

閑話休題、『ちゃぶ台の昭和(新装版)』(小泉和子編、河出書房新社)のおかげで、昭和20~30年代、家族が揃って、ちゃぶ台を囲んだ生活を懐かしく思い出すことができました。

「ちゃぶ台は明治20(1887)年頃から使われるようになったが、日本全国に普及したのは大正末頃から昭和初めにかけてである。ところが昭和30年代(1955年~)後半に入ると椅子式のダイニングテーブルが普及しはじめ、昭和が終わる60年代(1985年~)になるとちゃぶ台に代わってダイニングテーブルが日本人の食卓になってしまった。つまりちゃぶ台はちょうど昭和という時代に重なっていたということである。・・・もう一度昭和という時代の暮らしを、ちゃぶ台を通して、何が大事だったのか、何がいけなかったのか考えてみたいと思ってまとめたのが、この『ちゃぶ台の昭和』である」。

「『食事は一家揃っておいしく食べる』という一家団欒が文字どおりの実現をみたのは第二次大戦後である。戦後の一連の民主主義革命により、家父長家族制度が解体して、個人の尊重、男女平等が確立した。また労働者を中心とする国民一般の政治的・社会的地位が高まった。農地改革がおこなわれ、農民のほとんどが自作農民となった。加えてアメリカ文化の影響がある。こうした背景のなかで核家族を主とする家族本位の住まい、居間・台所・子供部屋の重視が進展し、一家団欒が満面開花した」。ラジオが全国に普及し、国民的娯楽となり、茶の間でラジオを聞きながら、家族全員でちゃぶ台を囲むというパターンが定着したのです。

「こうした状況をリアルタイムで描いていたのが昭和24(1949)年12月から『朝日新聞』に登場し、49(1974)年まで続いた長谷川町子の『サザエさん』である。このなかで磯野家の家族はいつも丸いちゃぶ台のまわりに集まって、楽しくお喋りをしながら食事をしたり、お茶を飲んだり、ゲームをしたりしているが、ここにみられるのは戦前には決してみられなかった民主的で明るい家庭像である。・・・明るくのびのびとして、しかも家族がしっかりと結びついていた様子が描かれている。日本人が民主主義をよきものとして受け入れ、よりよい生活へという目標をもって元気に生きていた時代の、一家団欒の風景といってよいだろう。もちろんフィクションであるが、当時の日本人が共有した、少なくとも共感した風景だったからこそあれだけの人気漫画となったのであろう」。

「こうしてたしかに一家団欒の平等な食卓は実現した。しかし一皮むけば表面的な民主主義にすぎず、前提となる真の自立というものを欠いていた。・・・ようやく実現した家族団欒も大人の長時間労働や子供の進学競争などで次々と家族が欠けはじめ、家族の会話はテレビに取って代わられることになっていった」。

絵と写真も豊富で、愉しめる一冊です。